欧米社会の知識人が思い浮かべるもう一つの日本
2015.12.20 up
『OCEANOS』に紹介された1640年に長崎で引き起こされた「4人のポルトガル大使と57人のキリスト教徒の虐殺事件」の版画
「もしかして現在のイスラム国以上に真実味の高すぎる日本の異教徒虐殺事件!」
そんな日本で起きた過去の事件の版画を日本を離れてブラジルで見せられるとは想像もしませんでした。
欧米社会の教養ある人々の間ではよく知られたイメージだと思うと、日本に関わりのある者としては気が気ではありません。
『OCEANOS』に紹介された1640年に長崎で引き起こされた「4人のポルトガル大使と57人のキリスト教徒の虐殺事件」の版画
ポルトガルやヨーロッパに残された資料を通じて、450年にわたる日本とポルトガルの交流史をまとめた雑誌『OCEANOS』がポルトガルで1993年に出版されています。
その中の一ページに、1640年に長崎で引き起こされた「4人のポルトガル大使と57人のキリスト教徒の虐殺事件」の版画が大きく紹介されています。1647年にローマで制作されたと明記されています。殺害された人々の名前も一人ずつ記されており、当時のリアルな事実が伝わってきます。
よく見ると、船員として乗り込んでいた人だろうと思われる肌の黒い人も混ざっており、決してポルトガル人だけが殺害された場面ではありません。ズラリと並んだ首が衝撃的です。
ポルトガルで1993年に出版された『OCEANOS』
この誰が見てもショッキングな版画を、サンパウロ市内の図書館で職員の方に紹介されました。
別のポルトガル史について調べに行ったはずが、「こちらの方が興味深いよ」と笑顔で紹介され、確かにそっちに目はくぎ付け。でも何を言っていいか言葉に詰まってしまいました。
ブラジルでは中学生年齢の子供の歴史教科書にも、江戸時代に長崎で宣教師が殺害された絵図が掲載されているのもショックです。現代はともかく、過去に日本人を警戒した白人の国々があり、色眼鏡ゆえに日本人差別があったとしたら無理ないことと思わされてきます。未だにキリスト教の白人国家では、日本との出会いはこのような出来事が最初にイメージされると思うと、歴史の重み、日々の過ごし方の重みを感じさせられます。
【ブラジルの中学校の歴史教科書に関する参照サイト】
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=2015228212239
『OCEANOS』が収められているサンパウロ市内の図書館内
最後に職員の方は「日本はファンタスチックな国ね!」と言われました。敗戦や地震後の復興は目を見張るとのことです。ポルトガルでも1755年にリスボン大震災があり、それが国内経済に打撃を与え、復興の困難さからブラジルや海外に移民する人を後押しすることにもなりました。1808年にはポルトガル王室までブラジルに一時遷都し、大地震からの復興がいかに難しいことかを歴史的に身を持って知っているお国柄です。
特集は重苦しい交流史ばかりではなく、ブラジルに来た日本人移民の文化に至るまで海外の人だからこそ見える日本人の特質が興味深い内容で幅広く紹介されています。
日本とブラジルの関係もポルトガルを通じて地球規模で450年以上の歴史があるのだと思うと感慨深いですが、虐殺事件の画像にはかないませんでした。
『OCEANOS』に紹介されているブラジルに来た日本人移民について紹介するページ
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