スペイン

スペイン:バレンシア

大田 朋子(おおたともこ)

職業…ライター、エッセイスト、講演家

居住都市…ブエノスアイレス(アルゼンチン)
→ケント(イギリス)
→バレンシア(スペイン)

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意外にも授業参観もあり子どもたちの毎日の生活を半日垣間見れました。

意外にも授業参観もあり子どもたちの毎日の生活を半日垣間見れました。

スペインでの生活も残り1か月となりました。
5年間に及ぶスペイン生活を振り返ってみると、驚いたことや感心したことが盛りたくさんだったことに気が付きます。

今回は、「子育て」に関してスペインらしいなあと(当初は)慄いたことをまとめてみました。


スペインでの子育てを始めてまずびっくりしたのは、幼稚園、保育園、学校の「時間配分」。スペインの長いお昼休みは世界的に有名ですが、バレンシアに来てすぐに幼稚園に行き始めた息子が、昼休みに一度帰宅してランチをとり、また午後に学校に戻る生活を始めたときに、この間延びな(過ぎる!)スパニッシュタイムを実感しました。

それにともなう影響は、送り迎えです。自宅と学校の送り迎えは一日4往復!

具体的に言うと、息子の幼稚園では、朝9時に幼稚園に登園し正午にお迎え。ランチを食べたり昼寝をしたりして午後3時に再び幼稚園に戻って、夕方5時にまたお迎えに行くといった流れでした。

慣れてしまうと、送り迎えの頻度の多さを利用して学校に送ったあとにジョギングに行ったり、一日を適度に分けて予定を立てるようになったり、おかげでだらだらせずに過ごせるという利点も見つけました。また、フリーランスであるわたしの場合は、その時の自分の仕事量によって、子どもが帰宅してランチをとる日と学校に残って給食を食べる日を設けることができ、どちらも適宜バランスよく経験できる状況だったのはよい点かと思いました。

一方で、この時間帯では放課後の活動時間がかなり限られてしまうことや、実際時間の無駄が多くなりがちなので、昼休みが過不足ない長さで適度な時間に帰宅できる(一般的な)時間割の良さも再確認したものでした。


昼休みの長さを利用して学校ではバスケット、サッカー、音楽、外国語といった課外クラスが用意されています。息子も水泳や料理クラスなどに参加しました。

昼休みの長さを利用して学校ではバスケット、サッカー、音楽、外国語といった課外クラスが用意されています。息子も水泳や料理クラスなどに参加しました。

また、スペインでは母親が仕事をしていなくても、子どもが1歳にもなるとグアルデリア(0~3歳までの子どもが行く幼稚園)に行き始めることも当初は驚きました。

私の場合、スペインに引っ越してきたとき息子は1歳9か月。
昼間に公園に遊びに行ってもお年寄りの方としか出会わず、かといって日中に子どもと参加できる集まりがあるわけでもなく、同じくらいの年齢の子どもと遊ばせたかったら幼稚園に行くしかないと、すぐに気が付きました。

もう少し息子との時間を楽しみたかった当時の自分は、予定よりも早く幼稚園に入れることに少しさみしさも感じましたが、結果的にはこれはとてもうまくいきました。2歳前後ともなると、子どもも他の子どもたちとの触れ合いが毎日適度にある方が健康的だし、わたしにとっても色々な意味でバランスのとれた生活が戻ってきたからです。

また、1歳、遅くとも2歳にはグアルデリア(幼稚園・保育園)に行くのが普通なスペインのこの保育状況は、日本を始めとする他国で見かけがちな「保育園vs幼稚園」といった制度や意識の対立がないことも良い点だと思います。もちろん、グアルデリアの数が足りているからできることで、ワーキングママにとっては子どもを預ける場所がいつでもあるという点で、職場復帰しやすい環境が整っているともいえます。


無宗教の私立を選んだにも関わらず、選択授業で「宗教(カトリック教)」がありクラスの9.5割が宗教クラスを選択していました。

無宗教の私立を選んだにも関わらず、選択授業で「宗教(カトリック教)」がありクラスの9.5割が宗教クラスを選択していました。

また、スペインでの宿題の多さにもびっくりでした。低年齢から宿題が始まることも。

息子も3歳から週末の宿題が始まり、4歳になると週2回、5歳になると本読みなどは毎日といった感じで、スペインに抱いていたスローなイメージとは対極にスクールライフは比較的時間に追われる窮屈な印象を受けました。週末は宿題を終わらせることからスタート、というのはスペインで子どもがいる家庭の常識。週日にも長い時間を学校に拘束されていることを思うと、案外自由時間が少ないことが親として気がかりだった点です。

スペインでは小学校から留年がある点も特記ですが、普通に勉強をしていたら大丈夫のレベルなので、そうなると日本で多くの中学生に無意味な試験勉強を強いる高校受験がスペインにはなく、無駄な試験勉強のための時間を割く期間が限られている点はよいのかなあ、とも思ったり…。


教育はそこに生きる人のメンタリティーや歴史、社会とつながっているので、違う教育制度を経験し、その制度や習慣がある理由や意味を考えてみることで、住んでいる(お邪魔している)社会を違う角度から見ることにもつながり、とても興味深かったです。






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