台湾の高校バスケHBL 「日本式」で掴んだ優勝 その1
2017.06.01 up
敗退で涙にくれる選手たち(2014年11月28日撮影)
高雄市私立普門高級中學(以下、普門高中)は、読売ジャイアンツ・陽岱鋼の妹、陽詩慧(中華電信)の母校です。彼女はチームの1期生として活躍した選手です。彼女の卒業後、2009年に優勝しましたが、その後は決勝に2度進出するも勝てず、2季前は1次予選敗退の屈辱も味わいました。
その2季前、大きな転機が訪れました。10年近く、普門高中と佛光大學を指導してきたロス五輪韓国女子代表の実績がある李亨淑ヘッドコーチが退任し、韓国へ帰国(最後の1年は大学だけで、高校は後方支援程度でした)。それを受け、以前紹介してきた(下記URLをご参照ください)高雄市立高級三民家事商業職業學校の謝玉娟ヘッドコーチ(以下HC)の教え子で、チームのアシスタントコーチ(以下 AC)だった廖哲億(リャオ・ザーイー)氏がHCに就任しました。
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=2013110204212
就任1年目はチームと選手を掌握し切れなかったようで、敗者復活戦の第1試合中、視察に訪れていた謝HCが客席から何度もアドバイスを送る姿があり、自動車学校の実車教習を見ているような感じでした。また、上の写真のように選手たちが負けて号泣していても、廖HCらは泣いている選手たちの肩を叩いて慰めるのがやっとで、言葉を掛けることもできませんでした。
上の写真では、その様子を客席から謝HC(横断幕の上の赤いTシャツ姿)が笑顔で見つめていますが、今振り返ると「やっぱりこうなったか」という感じだったのかもしれません。
選手たちを心配して父兄も駆けつけました(2014年11月28日撮影)
会場の外でも泣き崩れる選手たちを前にしても、何もできない廖HCらを見かねた謝HCが動き、選手一人一人だけでなく、その父兄からも丹念に話を聞き、最後は選手も父兄も集合させ、講話を行っていました。
謝HCの横で立っていた廖HCは、一言も発することができず、その表情からは自身がどれだけ非力かを痛感している様子でした。
それから、1年後。
ベンチでうつむく選手たち(2016年3月19日撮影)
佛光大學が主催する佛光盃に山形大学が参加していた縁で、2015年3月に山形大学を定年退官した大神訓章氏が総合アドバイザーに就任し、チームの運営に携わっていきました。加えて、廖HCが男子のチームしか経験がなく、女子の選手の掌握が難しかったことから、前出の1次予選の敗者復活戦で普門高中を奈落の底に突き落とした対戦相手の私立桃園市治平高級中學の黄巧凌(ファン・チャオリン)HCをACとして迎え、態勢を整えていきました。
2015年の1次予選時は、優勝を狙うには程遠く、選手たちにはもろさと弱さが同居している状態でした。2016年1月に大神氏の招待で実現した山形合宿で、精神面を中心にしっかり鍛え上げ、2月下旬に行われた準決勝リーグでは2位で決勝に進出するまでに成長しました。
しかし…。
選手とハイタッチを交わす黄巧凌AC(右)と廖哲億HC(右から2人目)
今度は、選手たちが決勝トーナメント前日の食事の弁当が原因とみられる集団食中毒にかかってしまい、3枚目の写真のように元気がなく、ベンチではうなだれ、試合では思うようなプレーができませんでした。
報道などによれば、交代でベンチに戻ってきた一部の選手がダッシュで裏のお手洗いに駆け込み、吐いていたそうで、「かわいそう」以外に言葉が見つからないほどでした。
そして、今季。
準決勝の様子
食中毒の教訓から、遠征中の食事の管理を強化し、前年行った山形合宿も今年1月に再度行い、万全の状態で今季のHBLに臨みました。
その結果、1次予選は4勝1敗のB組2位で勝ち抜け、2次予選は7戦全勝で決勝トーナメントに進出しました。3月4日の準決勝は日本のチームを彷彿させるような速攻と強固なディフェンスで対戦相手の新北市私立南山高級中學を72ー58で圧倒。視察に訪れた大神訓章氏の前で、選手たちは最高のパフォーマンスを見せました。
しかし、「日本のチームを彷彿させる」ようなプレーは、日本のチームのように試合終了まで続かず、途中でフッと気が抜け、相手に攻め込まれることがしばしば見られましたが、決勝はどうなったでしょうか。
次回へつづく。
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