コロナにも負けず、新店を手伝うシリア難民
2020.11.11 up
8月にオープンしたアラブ料理店『エスフィッハ・タイバット』
「ここのエスフィッハ(アラブ由来の肉やチーズがトッピングされたミニピザ)の味はサンパウロでも他で食べたことありません。シリア本国の味と全く同じです。とにかく食べてみてください」
シリア戦争を逃れてブラジルに渡ってから6年になるアブドゥルバセット・ジャロールさん(30、アレッポ生まれ)は、8月にオープンしたレバノン人フセインさん(54)のアラブ料理店『エスフィッハ・タイバット』(Rua Triassú, 335-Perdizes)のアラブ料理を絶賛し、郷里を味を懐かしみます。オープンして日は浅いですが、お客さんも確実に増え、特にアラブ系のお客さんが少なくないのも印象的です。
実際、いつも焼き立てが店頭に並ぶエスフィッハを食べてみると、サンパウロで一般的な塩味がメンイの肉の味付けではなく、スパイシーな肉の味付けが、ブラジルでは異国情緒を感じさせます。
フセインさんとアブドゥルさん
オーナーのフセインさんはレバノンが内戦を繰り返す時代に生まれました。多くのレバノン人と同じように、若い時から疲弊したレバノンを出て海外で生きることを目指し、米国やブルガリア、ルーマニアなどで暮らすことを試み、その後、1997年から南米に渡り、ブラジル各地でビデオゲームの行商をしたり、サンパウロで衣料品店を経営したり、パラグアイで輸入業者の管理をしたりしながら、たくましく生き抜いて来ました。
様々な商売を試みて来ましたが、最終的に不景気とパンデミックに追い打ちをかけられ、それまでの商売は閉鎖することになりました。しかし、七転八倒のアラブ商人たちの姿がサンパウロでは珍しくありません。14歳からレバノンでは飲食業の仕事にも携わっていたことで、腕に覚えのあるアラブ料理店で再起を図ることにしました。
コロナ禍で飲食店の営業が自粛を求められ、新店オープンは予定より遅れたものの、規制が緩み始めた8月に思い切って店をオープンすることになりました。コロナ禍にも中東の不安定な情勢にも負けず、サバイバルを続けるアラブ人たちの姿がサンパウロにはあります。
アレッポで同じ地区の出身のアブドゥルさんとアブドゥルバセットさん
フセインさんと一緒に働いているのは、親子ほど年の離れたシリア出身のアブドゥルさん(22)。アブドゥルさんは17歳の時、15歳の弟と2人で戦火のアレッポを逃れ、母が先に移住していたパラグアイに渡り、そこでフセインさんとも知り合い、ブラジルで難民となりました。現在、フセインさんの家に住み込み、店も手伝うようになりました。
アブドゥルさんとアブドゥルバセットさんはサンパウロで知り合いましたが、アレッポでは同じ地区に暮らす近所の住人でした。帰れなくなった故郷を持つ者同士、で分かち合いながらブラジルでともに中東の混乱に負けず生き抜こうと明るく前進するアラブ人たちの姿もあります。
『エスフィッハ・タイバット』の店頭で商品の説明するアブドゥルさん
『エスフィッハ・タイバット』のエスフィッハ
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