ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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左から2人目より、中沢宏一さん、ケリーさん、カワバタさん

左から2人目より、中沢宏一さん、ケリーさん、カワバタさん

 ブラジルのミナスジェライスライス州原産の「オラ・プロ・ノビス」という、長年にわたって庶民に食されてきた植物があります。オラ・プロ・ノビスは「我々のために祈り給え」という意味があり、サボテンの一種で、「緑の肉」「貧者の肉」とも呼ばれてきました。たんぱく質25%および豊富なミネラルを含み、「陸のわかめ」と言えるような食べやすさ、そして永年作物で無農薬で栽培できます。


パック詰めされたオラ・プロ・ノビス

パック詰めされたオラ・プロ・ノビス

 サンパウロ州アチバイア市在住の中沢宏一さん(79歳、宮城県出身)は、15年ほど前に隣家の農場で植えられたオラ・プロ・ノビスが自宅の農地に雑草として自然移植されたことで、試しに自宅でも食べ始めました。和洋の料理に取り入れて自身が食べ続け、ダイエット効果や整腸作用、さらにはアンチエイジング効果を実感できたことに自らも驚き、「これは本格的に市場で販売しよう」と、2018年に1ヘクタールに約1万本のオラ・プロ・ノビスの苗を植えました。そして、本格的に市場に出そうと思った矢先、コロナ禍に入り、その計画はストップしていました。

 しかし、ブラジルでもコロナ禍が落ち着き始め、中沢さんもオラ・プロ・ノビスを普及したいという思いが再燃。その矢先に、オラ・プロ・ノビスの栽培が「雇用創出」や「貧困層のたんぱく源確保」のための社会プロジェクトとしても注目され始めました。


オラ・プロ・ノビスのつくだ煮

オラ・プロ・ノビスのつくだ煮

 11月23日、中沢さん宅にはアチバイア市在住の農業技師・マルコス・ヒロ・カワバタさんと農業プロジェクト・リーダーのケリー・オルゴス・ララさんが訪問し、ケリーさんは、「オラ・プロ・ノビスをアチバイア市貧困層救済プロジェクトに組み入れたい」と提案しました。中沢さんは、「市場に拡大するだけでなく、一つの社会プロジェクトとして社会貢献できることもうれしいですね」と頬を緩める。


中沢さんの農園に植えられたオラ・プロ・ノビス

中沢さんの農園に植えられたオラ・プロ・ノビス

 ケリーさんによると、ブラジル連邦政府はコロナ禍に入って最初の6カ月間は、失業者に1200レアルを配給しましたが、6カ月後に配給がカットされると、失業者には飢え死にしかけている人も出現。最低給料以下で働いていた人が、1200レアルを受給するために失業者となった例も多くあります。今月から400レアルほどが支給されることになりましたが、この金額では大家族を支えることはできません。

 ケリーさんのプロジェクトは「のす・ぽる・えれす(彼らによる我ら)」と呼ばれ、社会的弱者の救済を使命とし、市民の連帯と団結による人道支援を目指しています。

 中沢さんが偶然栽培を始め、知るほどに地球の環境問題や食糧問題に貢献できるオラ・プロ・ノビスが、まずは地域住民の生活を救う社会プロジェクトとして着実な一歩を踏み出そうとしています。


中沢さんの農園に植えられたオラ・プロ・ノビス

中沢さんの農園に植えられたオラ・プロ・ノビス


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