帰化した難民が政治活動に
2021.05.07 up
PSB(ブラジル社会党)の党員に署名したアブドゥルさん(中央)とルシア・フランサさん、カイオ・フランサさん
「2022年のサンパウロ州議会議員選挙への立候補を目指します」と、気合いを入れるのは、シリア戦争を逃れて2014年にブラジルに難民として到着し、昨年には帰化したアブドゥルバセット・ジャロールさん(31、シリアのアレッポ出身)。
アブドゥルさんはブラジルに来て以来、自らも難民として新たな土地で生活をはじめながら、難民と移民を支援するNGOで、ブラジルの生活に困っている難民や移民の生活を向上させるための様々なプロジェクトを手掛けて来ました。
パンデミックになるまでは、難民への理解を深める様々なイベントを催し、新型コロナウイルスの影響でイベントが禁止されてからは、失業者が増加した難民や移民のために寄付による基本食料品の配布などに積極的に取り組んでいました。
そんなアブドゥルさんの活動に目を留めたのが、元サンパウロ州知事マルシオ・フランサ夫人のルシア・フランサさん(59)。自らは教師であり、授業で難民について教えることがあり、自身はレバノン移民の子孫であることから、同じアラブに縁のあるアブドゥルさんにも親しみを感じています。
ルシアさんは、「移民と難民ではその状況が大きく違う」と強く認識し、州知事夫人の時から、アブドゥルさんが副代表を務めるNGOにも支援の手を差し伸べて来ました。
PSBの正式党員として社会活動をすることに署名したアブドゥルさん
4月29日、アブドゥルさんは、ルシアさんの属するPSB(ブラジル社会党)の正式党員として社会活動をすることに署名しました。署名にはマルシオ・フランサ元州知事の息子で、2015年からサンパウロ州議会議員のカイオ・フランサ氏(33)が付き添いました。
2人は生まれ育った土地は異なりますが、年齢も近く、ルーツがアラブであるという共通点もあります。
アブドゥルさんの話を聞いたカイオさんは、「移民と難民の問題は社会が解決すべき課題の一つ」と語り、それぞれが力を合わせて今後の混沌としたブラジルや世界がより良くなるように手を取り合います。
アブドゥルバセット・ジャロールさん
日本では入管法(出入国管理及び難民民定法)の改正により、難民(避難民)や移民への応対がさらに厳しくなりそうなことで、国際的にもニュースになっています。
海外の人と難民問題の話題になると、「日本は裕福な国であるのに冷たい」という空気が伝えられ、日本人としては日本の政策のために居心地の悪い思いをすることもあります。
特に、先進諸国に比べても圧倒的に受け入れ率の低い難民に関しては、日本本国もどの様に取り扱って良いのかが分からない分野かもしれず、避難民に対する後進国となっているかもしれません。
ブラジルはブラジルの発見以来、500年以上に渡って難民という言葉は使用されなくても、ヨーロッパやアフリカ、20世紀には日本も移民という形で、世界中の人々を受け入れて来ました。
様々な問題のあるブラジルですが、広大な土地で天然資源が豊かなせいか、新しく来る人々を強制送還させるような発想はありません。元の国に帰還すれば殺される可能性がある場合はなおさらのことです。
ブラジルは新しい移民や難民を受け入れ、居住して10年にも満たない帰化した外国人にも、才能とやる気があれば選挙で立候補するチャンスを与えるおおらかさがあります。
懇談するアブドゥルさんとカイオ・フランサ・サンパウロ州議会議員
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