ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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ナミビ・プロ・モデルス

ナミビ・プロ・モデルス

 ラテンアメリカ初のアフリカ出身者が運営するモデル事務所があります。アンゴラのルアンダ出身のマイコン・クリントン・シルシャさん(32)が運営するナミビ・プロ・モデルスです。

 今年3月にはポルトガルのリスボンで開催された第6回ポルトガル語諸国共同体(CPLP)ミス・コンテストで、マイコンさんのモデル事務所出身のブラジル人ジャイアーネ・サントス・ダ・クルスさん(20)が勝利の栄冠に輝き、マイコンさんの存在もより広く知られるようになりました。ジャイアーネさんは3000ユーロを獲得し、後日、パリのファッションショーにも参加し、未来への夢がさらに広がります。


第6回ポルトガル語諸国共同体(CPLP)ミス・コンテストで優勝したナンビ・プロ・モデルス出身のジャイアーネさん(中央)

第6回ポルトガル語諸国共同体(CPLP)ミス・コンテストで優勝したナンビ・プロ・モデルス出身のジャイアーネさん(中央)

 マイコンさんは母親の勧めで7歳からモデル活動をはじめ、両親の勧めで15歳の時に一年間、フランスのパリに渡ってモデル学校に通いモデルとしての研鑽を積んでいました。その後、今日まで服飾の専門家としても活躍してきました。キャットワークの指導もお手の物です。

 マイコンさんの子供時代は、アンゴラ内戦のひずみで飢えが身近で、自らも内戦の弊害で足に銃弾がかすって負傷しましたが、幸い歩行には問題ありませんでした。

 18歳の時、父親が政治家から脅迫されて家族にも被害が及び、父親は息子たちの将来を考えてマイコンさんと弟二人をブラジル、イギリス、ドイツに渡らせました。しかし、マイコンさんはブラジルに来てから1年3か月は寝泊まりする場所も得られず路上生活を続けるという状況でした。

 その後、難民認定されて合法的に生活ができるように何ましたが、今日に至るまで、決して平たんな人生ではありませんでした。そのような中でも、モデル業や服飾業への情熱や夢を持ち続け、路上生活をしていた当初もモデルとしてのプロ意識を忘れず、筋トレに励み続けたというマイコンさん。


ナミビ・プロ・モデルスの代表のマイコンさん

ナミビ・プロ・モデルスの代表のマイコンさん

 約5年前から周囲の協力を得て、モデル事務所は少しずつ成長してきました。現在、マイコンさんのモデル事務所には250人の生徒がいます。内37人が多国籍出身の難民や移民です。3歳から60代までの生徒が、モデル業を夢見てレッスンに励みます。

 自らも路上生活を体験し、難民であるという状況の困難さやどのような逆境の中でも希望を見いだせるということを分かち合いたいという思いから、経済的に大変な生徒には奨学金制度でレッスンを受けられる機会を提供しています。

 今、マイコンさんのもう一つの夢は、路上生活中にブラジルに親に見捨てられた子供を見てきたことから、社会的に脆弱な子供たちにチャンスを広げる社会事業を行うNGOを立ち上げることです。


ナミビ・プロ・モデルスのマイコンさんとレッスンを受ける子供たち

ナミビ・プロ・モデルスのマイコンさんとレッスンを受ける子供たち

 ポルトガル語諸国共同体(CPLP)のミス・コンテストは、2013年に発足しました。パンデミックの間はイベントが休止されていましたが、今年3月には第6回目を開催することができました。

 同ミスコンは、ポルトガル語圏の国々の「社会文化的および歴史的多様性」の中で知識の交換や共有を行い、加盟国からの参加者による異文化理解を深めてより良い社会の発展を目指しています。


ナミビ・プロ・モデルスのレッスンを受ける女性たち

ナミビ・プロ・モデルスのレッスンを受ける女性たち


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