大都市の中にあるコミュニティのラジオ局
2022.04.11 up
コミュニダーデ・エリオポリスの通り
ブラジル社会の事象の一つとして、世界的にもよく知られてきたのがファベーラと呼ばれる集落です。特にサンパウロやリオなど、大都市のファベーラが有名で、貧困地帯や犯罪多発地帯のイメージでブラジル国内外でも報道されてきました。
ファベーラとは、もとは植物の名前で、各所に群生していました。そこに、ブラジルの地方から移住してきた人や貧困者が集まり、密集して建てられた建物に暮らすようになり、それがファベーラの様子に似ていたことや実際にファベーラが群生していた場所に家屋が建てられたことで、人々の暮らす場所の呼称になったということです。
ラジオ・ヘリオポリス局内でアナウンサーのブルーノさんと同局の発展を支えてきたシレーネさんと出演者のジャロールさん(左より)
かつては貧困層の暮らすイメージだったファベーラですが、今では自治力のある立派な共同体となっている場所も少なくありません。住人の生活も豊かになっており、貧困地のイメージを払しょくするためにも、呼称も行政でコミュニティと改められました。
サンパウロ州内で最も大きく、ラテンアメリカでも二番目に大きなコミュニティが、サンパウロ市内にあるコミュニデーデ・エリオポリスです。エリオポリスの住人は20万人で、地方の小さな町の人口よりも大きなものです。
コミュニダーデ・エリオポリスの風景
このエリオポリスの住人と世界の人々を結ぶラジオが、ラジオ・エリオポリス局です。 同局は1992年にエリオポリスの住民が家を建てる際、地域を組織的に強化するためのコミュニケーション手段として結成されました。
現在はコミュニティ内外の約19人のボランティアで運営され、エンターテイメントを織り交ぜながらリスナーに役に立つ情報が発信されています。
ラジオ・ヘリオポリス局内でアナウンサーのブルーノさんと出演者のジャロールさん
出演者は時の人を即断で決めていくことも多く、4月2日には、同日からラマダンに入ったムスリムのシリア出身のアブドゥルバセット・ジャロールさんと同局を支えてきた大学教授のシレーネさんが招かれました。アナウンサーのブルーノ・コエーリョさんが約2時間にわたってジャロールさんにインタビューを行い、ラマダンの事やシリア戦争から避難してブラジルに到着したジャロールさんの話、世界の難民の問題のことやブラジル社会への思い等について語られました。
放送中には、外から出演者の名前が呼ばれるなど、文字通り地域密着型のラジオです。ファベーラと呼ばれていた場所を成長させるために、地域を結ぶコミュニケーションツールとして、ラジオ局が果たしてきた役割の大きさがうかがえました。
コミュニダーデ・エリオポリスの風景
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