ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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ソラブさん家族

ソラブさん家族

 昨年、サンパウロの東洋人街リベルダーデ地区の一角に、サンパウロで唯一のアフガニスタン料理店『コイババ(Koh i Baba)』がオープンしました。

 店主はアフガニスタンのカブール出身のソラブ・コーカンさん(66)。2012年前に将来が見通せないアフガニスタンを後にし、ブラジルで暮らすようになりました。現在は家族皆でレストランを切り盛りしています。

 コイババとはアフガニスタンの首都カブールからバーミヤンにかけて連なる山脈の名前で、店内には戦争で破壊されたバーミヤンの石窟寺院の写真や奥さんが制作した伝統刺繍などが飾られ、郷里を慕う気持ちが伝わってきます。


サンパウロで唯一のアフガニスタン料理店『コイババ(Koh i Baba)』の店頭

サンパウロで唯一のアフガニスタン料理店『コイババ(Koh i Baba)』の店頭

 パンデミックに入り、何か新しい道を考え始め、サンパウロにはなかったアフガニスタン料理店を始めることを思いつきました。

 アフガニスタン料理だけでは印象が薄いということで、タイ料理やインド料理もメニューに用意しています。

 「アフガニスタンは東西南北の文化が行きかってきた土地柄で、料理の味もとても豊かなものです」
と、アフガニスタンの料理に自信を見せるソラブさん。

 店ではアフガニスタン人が好む緑茶もあります。
 「東洋人街で販売されている日本の緑茶を使用しています。味をとても気に入っています」と、話してくれましたが、日本の緑茶とはひと味異なります。尋ねると、緑茶にカルダモンとウコンを入れているとのことです。


『コイババ』のアフガニスタン料理

『コイババ』のアフガニスタン料理

 ソラブさん家族は、アフガニスタンの少数民族のハザーラ人です。ソラブさんは妻と二人でサンパウロに暮らしていましたが、昨年8月15日、タリバンがアフガニスタン全土を支配下に置いたと宣言したことで、タリバンに「アフガニスタン人とは認められないハザーラ人」の子どもや孫も出国を余儀なくされました。

 昨年9月初め、ブラジル政府は混乱するアフガニスタン情勢に配慮し、アフガニスタン人への人道配慮ビザを発給する省令を出しました。ソラブさんは8月にはパキスタンに渡り、子どもたちと合流し、イスラマバードのブラジル大使館に人道ビザの発給を何度も願い出て、ようやく今年1月に取得することができました。2月には息子と娘、孫と姪をサンパウロで迎え、10年ぶりに家族全員での生活を再開することができました。


カルダモンとウコン入りの緑茶を入れるソラブさん

カルダモンとウコン入りの緑茶を入れるソラブさん

 アフガニスタンの逆境から生き延び、新たな土地で家族力を合わせて暮らすソラブさん一家。ハザーラ人はモンゴロイド系の顔立ちで、サンパウロでも日本人とよく尋ねられ、日系人のお客さんも少なくないと言います。
 
 「アフガニスタンでハザーラ人のためにも働いてくれて中村哲さんが命を奪われたことはとても残念なことでした」と、日本には特別な思いを抱いてくれているソラブさんです。



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