ブラジルの町の代表する顔になったチベット人
2023.08.17 up
ブラジル最南端のリオ・グランデ・ド・スル州でブラジル有数の観光地として知られるグラマード市の隣町に、トレス・コロアスという人口約3万人の静かな町があります。
この町には同州内では特に、またブラジル全土でも知られるチベットのラマ教寺院があります。そして、その寺のある山の麓にはブラジルで初めて、今も唯一といえるチベット料理レストランがあります。
このレストラン『エスパッソ・チベット』のオーナーがチベットのデガ出身のオギェン・シェイクさんです。2006年にサンパウロ州のチベット寺院で仏画アーティストとして働くために来ました。その3年後、トレス・コロアスのラマ教寺院でボランティアをしていた現在の妻アドリアーナさんに出会い結婚、2013年に現在の場所でレストランをオープンしました。
チベット風のパンのチモモと肉料理のチャトッキ
オギェンさんの移住以来、人口約3万人のひっそりとしたトレス・コロアスでは、彼のレストランやチベット寺院が、その珍しさから同州内外でも脚光を浴びるようになりました。地元住民もさることながら、サンパウロ州などからも多くの観光客が足を運んできます。
パンデミック前までは、チベットの新年を祝うロサールが町のイベントにもなり、様々なグループと共同して、町を活性化させていました。オギェンさんは外国人ですが、今では町になくてはならない顔になっています。
ブラジルのチベット・ハウスの所長の説明によると、昨年には、約700万人のチベット人がチベットに住み、全世界に約15万人のチベット人難民が離散し、大部分がインドとネパール在住で、約10万人が暮らしているとのことでした。
現在、ブラジルにはオギェンさんを含めて4人ほどのチベット人しか暮らしていないとのことです。皆、チベットを出てきた人々やその両親の子どもで、チベットの亡命政府のあるインドのダラムシャーラーを経てきています。
一般にインドに移ったチベット人は、海外へ渡航するためのビザを取得が難しく、標準のパスポートと異なり、パスポートにインド政府から発行される難民を意味する「イエローブック」と呼ばれるものが必要で、これを入手するのに長いプロセスを必要とするとのことです。
オギェンさんは就労のためにブラジルに来て、結婚により移住することになりましたが、今ではすっかりトレス・コロアスの希望の星で、市の観光局のミーティングにもいつも出席しています。
レストラン「エスパッソ・チベット」は、伝統的なチベット料理をオギェンさんがモダンにアレンジしたおしゃれなメニューが揃えられています。全て食材はオーガニックで、生産者が分かることにもこだわっています。
アーティストで新しいものを創る事が好きなオギェンさんは、店内の装飾も自らがデザインして制作しています。
デザートのアイスクリームには甘くしたしめじを添えるなど、旧来の発想からは目が覚めるような斬新なアイデアで驚かせてくれます。
趣味は日本の盆栽というオギェンさんは、時間があれば庭いじりが趣味で、覇権争いが絶えないユーラシア大陸を離れ、平和なブラジル南部で穏やかな日々を送っています。
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タグ:ブラジル,リオグランデドスル州, トレス・コロアス,チベット
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