ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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カーザ・ムゼウ・エマ・クラビンの展示室

カーザ・ムゼウ・エマ・クラビンの展示室

 サンパウロの20世紀初頭頃からの高級住宅街ジャルジン・エウロッパ地区に「カーザ・ムゼウ・エマ・クラビン(Casa Museu Ema Klabin)」という、世界を旅した一人の女性が築いた美の館があります。ここは、約3,500点にも及ぶ絵画、工芸品、考古遺物、装飾品などが収蔵された邸宅美術館で、もともとはコレクターであり実業家、そして慈善家でもあったエマ・クラビン(1907-1994)の私邸でした。


カーザ・ムゼウ・エマ・クラビンの展示室

カーザ・ムゼウ・エマ・クラビンの展示室

 エマは、リトアニア出身のユダヤ人一家クラビン家に生まれました。彼女の父ヘッセル・クラビンは19世紀末、迫害を逃れてブラジルへ移民し、印刷業から製紙業へと事業を広げて巨万の富を築き上げました。その豊かな家庭に育ったエマは、ヨーロッパで教育を受け、芸術と文化に対する深い教養を身につけます。やがて世界各地を巡る旅の中で、多彩な文化や美に触れ、その審美眼で選び抜いたコレクションをこの邸宅に収めていきました。

 館内には、マルク・シャガール、タルシラ・ド・アマラル、カンジド・ポルチナリなど、世界とブラジルを代表する画家たちの名作が並びます。また、紀元前の中国青銅器、ルネサンス期のイタリア陶器、ヨーロッパ銀器、日本の根付や墨絵など、東西を超えた文化が見事に調和しています。


コレクションの一つ、日本の根付

コレクションの一つ、日本の根付

 建物は1950年代にドイツ系建築家アルフレド・エルネスト・ベッカーが設計し、エマが幼い頃に訪れたベルリン近郊のサンスーシ宮殿をモデルにしています。庭園は、ブラジルの著名な造園家ロベルト・ブルレ・マルクが手がけたもので、南国の植物が織りなす有機的な美しさが邸宅を包みます。


カーザ・ムゼウ・エマ・クラビンの外観

カーザ・ムゼウ・エマ・クラビンの外観

 図書室にはエマが愛した約3,500冊の蔵書が並び、静かな知の空気が漂います。エマ・クラビンは、芸術を愛し、人生を通して美と知を追求した女性でした。彼女の感性が息づくこの邸宅は、サンパウロの中心地にありながら喧騒を離れた文化のオアシスとして、今も多くの人を魅了しています。


エマの愛したカーザ・ムゼウ・エマ・クラビンの図書室

エマの愛したカーザ・ムゼウ・エマ・クラビンの図書室


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