「タンポポ」は、たくましさのシンボル
2011.06.07 up
美しいタンポポ草原 この中を元気に駆け回る子ども達が微笑ましいものです
誰もがお馴染みのタンポポ、子どもが綿毛を飛ばして遊んだり、広い草原の中を咲き誇る風景を眺めるだけでも心が安らぐという方も多いと思いますが、その生命力の強さに注目してみたことがありますか。
スウェーデンでは、Maskrosbarn(マスクロスバーン)直訳すると「タンポポっ子」という単語があります。これは何を意味するのでしょうか?
アスファルトの間からでも生えてくるタンポポの威力から派生した単語ですが、「問題のある家庭に育ちながらも社会に適応している子ども」のことです。
問題のある家庭とは、アルコールやドラッグ依存症の親を持っていたり、親から愛されずに虐待を受けていたり、まさに多種多様ですが、日本で最近話題になっている「モンスターペアレント」と似た点も一部あるようですね。
スウェーデンでは、そのような親を持つ児童を支援する機構「Organisationen Maskrosbarn(タンポポっ子協会)」が2005年に発足し、皆様からの寄付や会員の活動により成り立っています。
協会では、親が養育できない子どもの施設に衣類やおもちゃを提供したり、問題のある親を持つティーンエイジャーが集まり悩みを相談する場を作ったり、そのような親の元で育った人々の就職活動を援助したりなどの活動が行われているようです。
問題のある親を持つ子どもは社会に上手く適応できない場合も少なくありませんが、そんな環境にも関わらず高い社会適合力を持つ「タンポポっ子」は、親に依存できない環境から、近隣の人など親以外の大人との絆を強く持つ傾向があり、そして強くたくましい精神力が特徴とされています。したがって「タンポポっ子」とは一言でいうと「(精神的に)強い子ども」といえます。
アスファルトの間からも顔を出し咲いているタンポポ 「タンポポっ子」の所以です
タンポポのアスファルトの間からでも生えてくる威力も強大なものですが、どれだけ踏まれても生き延びる生命力も、タンポポのシンボルと言える「たくましさ」ですね。
また、ビタミンやミネラルが豊富なタンポポは、健康食品としても注目され、サプリメントやお茶なども出回っていますね。スウェーデンでは「タンポポワイン」といって、タンポポにイーストを混ぜ発酵させた飲み物を自作し愛飲する人も多いようです。この健康パワーもタンポポが強みを象徴する所以であると思います。
日本だけでなく、スウェーデンでも時々見かける奇形タンポポ。主な出現場所はバス停や団地街など、吸殻やゴミや捨てられやすい場所であることから、化学物質が原因なのは間違いなさそうです。広々とした草原で奇形タンポポは殆ど見かけません
スウェーデンの政党の一つ「Miljöpartiet de Gröna(緑の党)」自然や環境を守ることをマニフェストとしている政党ですが、シンボルマーク(右下)にタンポポが使われています
帯化などタンポポの奇形が日本各地で多発していることが話題になっていますが、変異してでも朽ちることなく咲く、そんな「たくましい」タンポポこそが、環境のバロメーターとも言えるのかもしれません。
「タンポポのように強くたくましく生きる」時にはそんなことを真面目に考えてみることとしましょうか…
レポーター「山本 グィスラソン 由佳」の最近の記事
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