台湾

台湾:台北

小川 聖市(オガワ セイイチ)

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市(台湾)

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準決勝の様子

準決勝の様子

 これまで、何度も台湾の学生スポーツを扱ってきましたが、日本の学生スポーツと相通ずるところがあり、それを知ってもらもうと思い、紹介しています。

 今年は、高校バスケHBLの男子決勝で敗れた新北市の南山高級中學(以下、南山高中)の許時清ヘッドコーチが悔し涙に暮れる選手に残した言葉が一時反響を呼んだので、それを紹介したいと思います。


準決勝は最大16点差を逆転し、勝利。喜びも格別です

準決勝は最大16点差を逆転し、勝利。喜びも格別です

 今回の南山高中は、一次予選は全勝で突破し、順調なところを見せましたが、二次予選では優勝候補がひしめくグループに入り、苦戦を強いられ、敗者復活戦を勝利して準決勝リーグに上がりました。

 準決勝リーグは立て直して6勝1敗の1位で、決勝トーナメントに進出しました。

 準決勝の相手は、準決勝リーグ4位の新竹縣の東泰高級中學。

 はじめて決勝トーナメントに進出してきた相手で、南山高中が有利の予想でしたが、苦戦を強いられ、最大16点差がつきました。

 第4クウォーターに入ってから少しずつ点差をつめ、最後の36秒で逆転し、76ー72で勝ち、決勝へ進みました。


決勝の様子

決勝の様子

 決勝は同じ新北市の泰山高級中學。

 序盤から試合を有利に進め、最大12点差をつけますが、最後の27秒で逆転を許し、81ー78で敗れました。

 【決勝の様子】

https://youtu.be/28QUvQ0Eqco


筋けいれんで患部を押さえる主力選手。自力で歩けない状態で、閉会式もコートに座った状態で出ていました。

筋けいれんで患部を押さえる主力選手。自力で歩けない状態で、閉会式もコートに座った状態で出ていました。

 「絶対勝てる!」と信じて試合を進めていただけに、ショックは大きく、試合終了後は、全選手が涙に暮れました。

 私は全然気づかなかったのですが、南山高中の試合後を追いかけていた台湾のメディアが許時中ヘッドコーチが涙を交えながら選手に話をしている様子を撮影していました。

 その言葉は、みなさんにもぜひ知っていただきたいし、一見の価値があると思いましたので、以下紹介します。


喜びが爆発する勝者と対照的な敗者の様子。この後、許時清ヘッドコーチの言葉が・・・

喜びが爆発する勝者と対照的な敗者の様子。この後、許時清ヘッドコーチの言葉が・・・

 あと一歩だったな…

 第4クウォーター、オレはみんなをしっかり支えてやれなかったけど、出せるものを最大限出したんだったら、それで充分

 1年間、みんなお疲れさま
 みんなで励まし合ってきたよな
 ケガの痛みも、挫折もあったよな
 でもオレは思うんだ、それでも前へ進んでいくんだ。更に前へ…

 3年生は卒業を控え、すぐに大学生活が始まるけど、その後続く道も進んでいくんだ

 オレたちは、やれるだけのことはやったんだ
 悔いが残ってなかったら、それでいい
 一生懸命練習したもんな
 目標にはたどり着けなかったけど…

(言葉に詰まり、涙が…)

 オレたちはさ、きっと何かが足りなかったんだよ
 みんな考えたくないだろうけど
 ずっとがんばってきたから余計そうなんだろうけど
 それでも前へ進むには何かしらの力は必要なんだ、
 とにかく前へ進み、日々よくしていかないといけないんだ

 今日はもう過去のものだ
 だけど明日…
 明日は必ず来るんだ
 みんなで今日の「負けたくない」というあらゆる気持ちを支えにして、克服するぞ
 明日は、どうあがいても必ず来るんだ
 明日が来たら、オレたちはまた努力を重ね、前へ進むんだ
 がむしゃらになって練習すればいいんだ

 勝ちたかった…
 優勝したかった…
 でも最後はこうなってしまった
 それでも前へ進むぞ

 声出しするぞ!
 頭を上げろ!

 いつも「Team」って叫んで声出しするけどさ…

 勝った喜びも負けた屈辱と悲しみも共に分かち合うんだ
 負けてもみんなでその負けを背負い、抱えて前へ進んでいくんだ
 そして一緒に乗り越えるんだ
 だからオレたちは何度も「Team」って叫ぶんだ

 頭を上げるんだ!
 頭を上げて胸を張って、この台北アリーナを後にするぞ
 頭を上げろ!
 胸を張れ!

 「Team」って、やっぱりオレたちには必要不可欠なものなんだ、

(全員集まり、手を合わせ…)

 1、2、3「Team!!」

 
【参考】
https://youtu.be/GkW9HgkKs0c

 表彰式が始まる直前、ベンチで涙をぬぐう許時清ヘッドコーチの姿を見かけましたが、その前にこのシーンがあったのを知りませんでした。後日、この映像を見た時、負けてもうつむくことなく、常に堂々として振る舞っている南山高中の選手はこうやって育まれているんだと知ることができ、うれしい気持ちになりました。

 この時の許時清ヘッドコーチの言葉は、そばで聞いていた選手たちが高校を卒業し、将来指導者になった時、再度語り継がれていくことでしょう。そういう貴重な言葉が聞けただけでも、幸せなことだったように感じました。

 そうした幸せをもたらしてくれるスポーツの魅力が、これから本格的に帰ってきそうな気がします。


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