ブラジルの酒「カシャッサ」 1 登録商標は4000から5000種類
2012.09.29 up
市立市場の食料品店で陳列された、代表的なアルテザナル(手造り製造)のカシャッサの数々。手持ちの瓶には「アグアルデンテ・デ・カーナ(=カシャッサ)」と赤字で記されている。
「カシャッサ」、「ピンガ」、「アグアルデンテ・デ・カナ」と呼ばれるアルコール飲料は、ブラジル原産のサトウキビから造られるアルコール度数が38%から48%の蒸留酒です。
カシャッサはブラジルの植民地時代(1500~1822)、砂糖農園で働く奴隷たちの間で生まれたと言われ、今日では世界に向けて発信されるブラジル文化を代表するお酒となっています。
数百年の歴史あるカシャッサですが、植民地時代は宗主国ポルトガルのワインやアルコール飲料と競合するなどが理由で、市場に流通させることや製造することさえ禁じられたこともあったそうです。
時を経て、ポルトガル人カブラルによるブラジル発見500年を迎えた2000年ごろからは、カシャッサはブラジルが世界に誇る文化として再び認識が高められた感があります。
特にルーラ元大統領(任期2003-2010)が在任中に、「カシャッサという呼び方は、あるレベル以上の酒だけに使おう」というような案を打ち出し、以後、サトウキビの蒸留酒といえば、大衆的なイメージの「ピンガ」ではなく、高級感のある「カシャッサ」という呼称での存在感が増してきた雰囲気があります。事実、ピンガと呼ばれる商品よりも、カシャッサと呼ばれる商品の方がおいしいように感じます。
サトウキビからのお酒ということで、「ブラジルのラム酒」と表現されることもあるようですが、ブラジルとしては「ブラジルにはラム酒は無く、カシャッサはカシャッサである」という高い誇りがあります。
カシャッサを専門に取り扱う会社『ソルーション(SOLUTION)』のイランさんとエリックさん
サンパウロ市内にある南米の川魚料理専門店『ランショ・ダ・トライーラ(Rancho da Traira)』というレストランでは、アルコール飲料のメニューの中に、ブラジル各地で生産されるカシャッサも100種類近く用意されています。『ランショ・ダ・トライーラ』が懇意にしているカシャッサを専門に取り扱う会社が、『ソルーション(SOLUTION)』というサンパウロ市内にある会社です。
『ソルーション』はブラジル各地のカシャッサを900種類、2000ラベルの商品を取り扱っており、ブラジル各地の商店やレストランなどに商品を卸す他、海外にも輸出しています。カシャッサの普及にも努め、講義や試飲会を開くなど、幅広く活動しており、カシャッサの流通業ではブラジルで最も注目を集める会社の一つです。
経営者のイランさんとエリックさんに『ランショ・ダ・トライーラ』でお話を伺う事ができました。
現在、ブラジルでは約4000~5000種類のカシャッサが商品として登録されているそうです。カシャッサは、「工業生産」と、「アルテザナル」と呼ばれる小規模で独自の製造法による手作りの製品に大別されます。
ブラジル各地で生産されていますが、工業生産による生産量が最も多いのはサンパウロ州で、「アルテザナル」の生産量が最も多いのはミナスジェライス州(サンパウロの隣州)です。
良いカシャッサはグラスの壁についた酒がオイルのようにトローリとゆっくり下に流れる
良いカシャッサの見分け方は、まず、小ぶりのグラスに酒を入れ、グラスの壁に酒を回しつけた後、ついた酒がオイルのようにトローリとゆっくり下に流れてくることだそうです。不純物が無いのもポイントです。
次はアロマと口当たり。良いカシャッサはツーンとしたアルコール臭が無く、滑らかな舌触りが特徴です。樽に寝かせた場合は芳香を楽しむこともできます。輸入のオーク樽を使用することもあれば、ブラジル産のジェキチバやイペー、アメンドインなど様々な木から作られた樽も使用されています。ジェキチバは色や香りが控えめで、アルコール臭を抜くのを目的に、ただ寝かせるためだけに利用される樽の素材です。カクテルを作る場合は、芳香の少ない無色透明のカシャッサが適しています。
他のお酒と同じように、頭痛や悪酔いをしないのが良いカシャッサの条件です。
カシャッサの価格は、どこのスーパーでも販売されている工業製品のメーカーで、900mlが6レアル(約300円)くらいです。『ソルーション』では、「アルテザナル」を中心に、一本20レアル(約1000円)くらいから3000レアル(約15万円)の商品を取り扱っています。3000レアルの商品は「ROCHINHA 25 anos」という25年物の銘柄で、登録ナンバーや詳細な証明書なども付いてくるということです。
『ランショ・ダ・トライーラ』のカシャッサのみの特別メニューの一ページ。銘柄や産地が記載されている
工業生産から私邸の農園まで製造されているバラエティー豊かなカシャッサですが、輸出先で目立つのは、ドイツ、中国、アメリカ合衆国で、日本では工業生産のごく限られた銘柄しか一般には出会えないのが現状です。
ブラジル料理の味を最高に引き立てる上質のカシャッサが、日本でも注目を浴びる日が来ることをブラジルの人々は願っています。
【カシャッサの卸店SOLUTIONの参照サイト】
http://www.solutioncoml.com.br/cachaca.php
【ブラジル全土のカシャッサを飲めるレストランRancho da Trairaのサイト】
http://www.ranchodatraira.com.br/mariana/index.php
瓶は簡素でも一本800レアル(約4万円)くらいの値が付くカシャッサ(一番左)や一本1500〜2000レアル(約7万円から10万円)くらいの値が付くカシャッサ(一番右)もある
レポーター「大浦 智子」の最近の記事
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