移民の国、それぞれの町と人の戦後70年
2015.09.08 up
第二次世界大戦中のサントス市の日本、イタリア、ドイツ移民の状況をフォーカスした地元紙ボケニュースの戦後70年特集
第二次世界大戦終結から70年、日本では教育やメディアの影響によって、8月15日が終戦というイメージが定着していると思います。
日本の終戦は確かに1945年8月15日かもしれませんが、第二次世界大戦の公式終了日といえば、1945年9月2日、降伏文書調印日という方が世界史上はインパクトがあり、ブラジルでも公的な認識になっています。それを物語るような記述が、ブラジル・サントス市の地元紙ボケニュースが戦後70年を記念した特集(8月29日-9月4日号)で見ることができました。(二枚目写真)
ボケニュース紙の戦後70年特集で、第二次世界大戦の公式終了日は1945年9月2日と記された前書きの部分
サントス市は19世紀後半から20世紀半ば過ぎまで、世界からの公式移民が250万人以上到着した港町で、ラテンアメリカ最大の貿易港でもあります。今も日本人はもちろん、ポルトガル、イタリア、アラブなどの移民とその子孫が暮らしており、サンパウロ同様、他民族が仲よく共生する街です。
サントス市のボケニュース紙の戦後70年特集は、第二次世界大戦中のサントス市の日本、イタリア、ドイツ(当時の枢軸国)の移民とその子どもたちの状況をフォーカスした地元紙ならではの興味深い記事が見られます。
第二次世界大戦中のブラジルでのトピックとサントス市の日本、イタリア、ドイツ移民の状況をフォーカスした地元紙ボケニュースの戦後70年特集
ブラジルは、ドイツ海軍に船を撃沈された後、1942年にドイツとイタリアに宣戦布告をしました。ブラジル遠征軍(FEB)が組織され、通称プラシーニャというイタリア遠征部隊が結成され、訓練を受けた後、第一陣として第六歩兵隊がカサパーバ港からイタリアに送られました。
サントス市内で暮らすマテウス・サルソさん(92歳)は約5000人が送り込まれたイタリア遠征軍の生き残りの一人です。多くの仲間は命を落としました。
サルソさんはサンパウロ市内でイタリア人移民の家庭に生まれました。ブラジルで生まれたのでブラジル人ですが、イタリア遠征軍には加わりたくなかったものの、逃げることはできませんでした。
興味深いのは、イタリアのナポリ港に到着した時、サルソさんは敵であるはずのイタリア人から熱いキスと抱擁で迎えられたそうです。途中、戦火で腰に負傷を負いましたが、降伏文書調印後、軍司令部から20日間、イタリアの親戚を訪ねることが許され、後にイタリアの親戚もブラジルに移民することになったそうです。サルソさんはブラジルでの人生に誇りを持って生きてきました。
ボケニュース紙で紹介された2015年8月に寄港した日本の海上自衛隊の様子のレポート
第二次世界大戦中のブラジルでは、ブラジルの敵となった枢軸国の日本、ドイツ、イタリアからの移民は、それぞれの言葉の使用が禁止されるなど、苦しい状況に追い込まれました。
当時、サントス市の日本人移民は子弟のための学校を作り、漁業や農業に従事していましたが、戦時中、船や土地を取り上げられ、学校として使用していた施設も没収され、多くの人がブラジルの奥地に逃げ込むことを余儀なくされました。同様に、サントス市近郊の沿岸部に住むドイツ人への風当たりも強いものでした。
その様な時代を経てきた生き証人であるサルソさんと、サントス日本人会会長を長年務めてこられた上新さん(93歳)に敬意を称して、ボケニュース紙は戦後70年特集で紹介しています。
なお、同じ号では、毎月一回特集されるサントスの日系社会面で、8月に寄港した日本の海上自衛隊の様子もレポートされています。
ブラジルのサントス市の地元紙ボケニュース。第二次世界大戦中、イタリア遠征軍で戦ったイタリア移民2世のサルソさんが表紙に飾る(右上)
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