円熟画家の原爆の絵、ブラジルから長崎へ
2017.08.15 up
伊藤薫さんと「平和への希い」
8月6日、9日は広島と長崎に原爆が投下された日。ブラジルからも祈りを込め、72年前のこの日を思い続ける人たちがいます。
サンパウロ市内に日本語と絵画教室「Shunkun」を開いている伊藤薫さん(80)=長崎市生、画家=もそんな一人です。アートを通して世界平和を強く願ってきました。
「今までいくつも原爆に関する作品を描いてきたけれど、このテーマは今回が最後です」。8月から、伊藤さんのギャラリーには完成したばかりの「平和への希い」が展示されています。この作品は、来年の年明けには長崎市へ贈られます。
サンパウロの地元紙や日本人コミュニティーで発行されているフリーペーパーにも、8月に合わせて伊藤さんの作品が紹介されるなど、ブラジルでも米国の日本への原爆投下は決して忘れられていません。
「平和への希い」を紹介する地元紙Gazeta de Pinheirosと日本語フリーペーパーPIndorama
「どんぐり山にいて強い光を見たけれど、何が起こっていたかその時は分からなかった」。今も原爆投下の瞬間が脳裏に焼き付く伊藤さん。8歳の時、爆心地から2.5キロの場所で被爆し、命は救われました。
「平和への希い」(水墨画、210 x 90cm)には原爆投下直後に伊藤さんが目にした長崎と広島の町の光景が、解説とともに描写されています。今回、原爆のテーマは最後で、郷里の長崎市へ贈るということもあって、伊藤さんご自身のストーリーが1か所だけ描かれています。それは、爆心地の三菱兵器工場で働いていた伯父さんを7日後に探しに行った時、「伊藤」という入れ墨の入った腕を見つけ、持ち帰った伊藤少年の姿です(写真3枚目)。
「作品で伝えたいのは“世界平和”」。伊藤さんの原爆をテーマにした他の大作は、サンパウロ州議会にも収められ常設されています。
伊藤さんが伯父さんの腕を見つけた時の情景
10歳から画家の伯父に習って絵を描き始め、絵の道を志すようになった伊藤さん。16歳から2年間、長崎を飛び出すようにしてイタリアやスペイン、フランスで遊学し、日本に帰国して10日後にブラジルに移民することになりました。
「ブラジルに来ようと考えたことはなかったけれど、これまでの人生が天に運を任せたようなものでした」と振り返ります。
移民してからはブラジルで専門家のいなかったエアブラシの技術を生かし、「広告デザインならエジソン伊藤」と言われるほど、多国籍企業で長年、活躍されてきました。他にも特技の空手、柔道、そして今も妻のテレーザさんと一緒に、絵画、習字、日本語教室を開くなど、日本文化の普及にブラジル社会の第一線でご活躍され続けています。
語り部風に記された原爆のこと
ブラジルより祈りをこめて
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