台湾の統一地方選挙が昨年11月24日に行われました。与党の民主進歩党（以下、民進党）が改選前13の首長のポストを6に減らし、中國國民党（以下、國民党）が6から15へと増やし、民進党の党主席だった蔡英文総統は選挙の惨敗の責任を取って党主席を辞任しました。

　以上、すでに皆さんが報道でご存じの情報ですが、こちらでは、皆さんがもしかしたら知らないのではないか、という情報を中心に紹介していきます。

　まず、選挙当日の昨年11月24日。台北市内の各投票所には、9:00前の時点で長い列ができていました。聞けば、台北市の場合、市長選挙だけでなく、市議会議員選挙、「里長」と呼ばれる地域の代表者を決める選挙、10の住民投票を一つの会場で同時に行っていたそうで、列がなかなか前に進んでいかず、並び始めてから投票終了まで最長で2時間近くかかった方もいました。

　また、投票終了時刻は16:00ですが、これが「16:00前に並んだ投票者まで有効」として投票も進めながら傍で開票作業も進めていく、という珍現象も起きたそうです。

　同時に開催していた台北国際旅行展の記者室でも、私が入った12:00ごろは記者が全然おらず、聞けば「みんな投票に行って、遅れている」ということでした。

　今振り返ると、後で来た記者と、担当の方が選挙の話をしていて、少し盛り上がっていたように思います。

　台北市長選挙は、無所属で現職の柯文哲市長が58万820票で当選しました。一方、元立法委員で國民党の丁守中（ディン・ショウジョン）候補は57万7566票で、その差は3254票。

　開票が始まってからは、小差の接戦が伝えられ、確定したのは翌25日の3:00頃。それまでテレビの選挙速報を見ていて、寝られなかった人たちが多くいたようで、私の知り合いにも朝、眠い目をこすっていた方がいました。

　また、その影響は朝刊にも現れ、印刷の締め切りに間に合わなかった一部の新聞では台北市長の枠が空白で出ていて、蘋果日報（アップルデイリー）は新聞の印刷を遅らせ、他紙よりも遅く店頭に並びました。

　1枚目の写真で蘋果日報がないのは、私が買えなかったためです。
　
　ところが、わずか3254票差だったことから、丁守中候補がその結果を不服として、すぐ投票用紙の再集計を要請。その結果が12月13日に出ました。

　柯文哲市長　　58万820票　→58万663票
　丁守中候補　　57万7556票 →57万7096票

　結果は変わりませんでしたが、得票差が3567票とさらに広がりました。加えて、丁守中候補が再集計の要請の際に納付していた保証金の約428万元（約1572万6289円）は戻らず、没収となりました。
　
　丁守中候補は、この決定を踏まえ、国家賠償法と民法に基づき、中央選舉委員會の法律上と賠償責任を追及することを検討しているとのこと。今回の再集計だけでなく、この訴訟にしても、勝ち目があるとは言い難く、いろいろな意味で踏んだり蹴ったりのようです。


＊丁守中候補のことは、こちらもご参照ください。
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=201612415211

　ちなみに、この再集計で費やした時間は7日、携わった人数は4000人以上、再集計した票数は約216万票だそうです。


＊参考
https://tw.news.yahoo.com/驗票出爐-丁守中少470張-差柯文哲3567票-115842623.html

https://news.tvbs.com.tw/politics/1046962

　この次の選挙は、2020年1月の総統選挙と立法委員選挙。國民党と丁守中候補が再集計を求めた背景にあるのは、台北市長選挙でも勝って、勢いをつけたかったのではないかとみられますが、柯文哲市長の壁は予想以上に高かったようです。

　一方の民進党は、台北市長選挙に当選した無党派層の代表格とも言える存在の柯文哲市長と連携し、柯文哲市長を擁立（もしくは2014年の台北市長選挙のような相乗り）するのでは？などという憶測も出てきているようですが、果たしてどうなるでしょうか。

レポーター「小川 聖市」の最近の記事

• 総統、副総統の旧正月
• 「日本」にひかれた年貨大街　　
• 落書きに見る若い世代と社会の変化

「台湾」の他の記事

• 総統、副総統の旧正月
• 「日本」にひかれた年貨大街　　
• 落書きに見る若い世代と社会の変化