世界難民デーに合わせたイベント「開かれた扉」
2018.07.04 up
「開かれた扉」でこれまでの状況を語り合う、ブラジルで難民として暮らす人々
日本は毎年20人から30人、2017年のブラジルでは1万145人。この数は両国での難民認定者数です。ブラジルは日本に比べて広く難民を受け入れている国と言えます。
ブラジルでは10年頃から難民申請者数と認定数が年々増加してきました。多くが内戦や貧困が問題となっているアフリカ諸国です。他にも11年からの内戦によりシリアからの難民が14年に急増し、現在はブラジルの難民認定者数で最多を占めています。そして、2年ほど前から現在まで急増しているのが、政治経済の混迷が続いているベネズエラ人の難民申請者です。
6月20日は「世界難民デー」。これに先駆けて6月16日、サンパウロのカリタス・インターナショナル(カトリック教会の社会福祉機構、以下カリタス)で、難民への理解を深めてもらうためのイベント「ポルタス・アベルタス(開かれた扉の意)」が催されました。
カリタスは世界各国で社会的困窮者を支援している組織で、ブラジルでは難民を最も支援している団体の一つです。ブラジルにはサンパウロ以外に、リオ、クリチーバ、ブラジリアに支部があり、サンパウロは創設50年を迎え、難民支援には40年の実績があります。
ブラジル連邦警察の発表によると、17年にブラジル全体では3万3865人の難民申請者と1万145人の難民認定者が登録されてましたが、同年、サンパウロのカリタスでは85カ国、6397人を応対しました。
「開かれた扉」で、ブラジルで難民として暮らす人々がこれまでの状況を語り合う様子
近年、「ポルタス・アベルタス(開かれた扉の意)」は年に2回開催され、各国からブラジルに渡って暮らしている難民が、これまでの歩みや現在の生活などを紹介しています。
今回自らの体験や文化を紹介したのは、ベネズエラ、コンゴ民主共和国、アンゴラ、シリア、イラン出身の5人です。5人の話に共通するのは、平和を求め、新しい人生を求めて難民となったこと、故郷で育まれてきた文化への思い、そして難民の生活は決して楽なものではないということです。
アンゴラ人男性が強く訴えたのは、今はアンゴラ内戦は終息し、ポジティブな面が喧伝(けんでん)されがちですが、実際の現地の人々の生活には表に見えないところで貧困や暴力など、まだ暗い影をたくさん抱えているということです。実際、アンゴラ人の難民申請者数は他のアフリカ諸国に比べて圧倒的に多いものの、認定されるまで長い時間を費やすのが実情です。
ブラジルに来た難民の方々を通して伝えられる、各国の現地の生の情報は重いものです。
ベネスエラ料理アレッパスを食べられる「開かれた扉」のコーナー
難民の体験談の後、質疑応答ではそれぞれの国の言葉を紹介するという一幕がありました。シリア人は中東やアフリカで使用されているアラビア語の各地のなまりを紹介、イランでは約20の言語と20の文化の人々が暮らしているという本来文化的に豊かな地域であるということ、そしてコンゴでは400以上の部族が400以上の文化をもつマルチカルチャーの話題が飛び交いました。
『開かれた扉』にて各国の人々が音楽に合わせて踊り出す
異なる民族、異なる言語、異なる宗教の人々と陸続きで暮らしてきた人々の話題は興味深く、ブラジルに来て数年であるにもかかわらず、堂々と笑いも取りながらポルトガル語で発表する才能には驚かされます。
出身国は違ってもブラジルに来て同じ難民ということで仲間意識も芽生え、国や文化を超えて良き友人となっている人々もいます。フードコーナーではベネズエラを代表する料理アレッパスのサービスがあり、誰もがおいしく頂いていました。
体験コーナーでは、ブラジルが植民地時代に奴隷船でアフリカ人女性を連れてくる際、彼女たちがスカートの切れ端を使って子どもに作っていた「アバヨミ」という人形を、参加者が一緒に製作していました。
「開かれた扉」でアバヨミを作るコーナー
イベントの締めくくりにアンゴラ人男性がアンゴラのポップダンスを披露し始めました。シリア人やイラン人の男性たちはベリーダンスのまねをしながら、会場は一瞬熱気に包まれました。今の生活は大変とはいえ、出身国で生きるか死ぬかのような状況を生き延びてきた難民は少なくありません。ポジティブに新天地で前進していく人々の姿が垣間見えました。
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