ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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サンパウロ州イトゥー市で工業用排水の泡に汚染されたチエテ川

サンパウロ州イトゥー市で工業用排水の泡に汚染されたチエテ川

 ブラジル・サンパウロ州を横断する大きな川にチエテ川があります。大西洋岸の森林山脈を水源に、州の内陸に向かって横断し、隣州の境界線であるるパラナ川に流入し、やがてアルゼンチンのラプラタ川となって大西洋に流れ出ます。

 植民地時代には奥地探検隊(バンデイラス)がサンパウロ市からこの川を主軸に内陸を探検し、各地に今日の町の拠点を築いていったと言われています。そんな歴史あるサンパウロ州民にとってなじみの深い川が、現在は汚染川の代名詞となっているのは悲しいことです。


サンパウロ州イトゥー市で工業用排水の泡に汚染されたチエテ川

サンパウロ州イトゥー市で工業用排水の泡に汚染されたチエテ川

 サンパウロ市の工場をはじめ、各地の工場から排出された工業用水が量を増し、川の流れに振られることで徐々に泡立ちを増し、サンパウロ市から車で1時間も行った場所辺りには、流氷かと思うような真っ白な泡で覆われるチエテ川を目の当たりにします。

 ところで、サンパウロ市から約100キロ離れたチエテ川沿いの町イトゥー市には、ヴァルヴィートという地質を有する公園があります。この地質は、3億6000万年前に始まり、2億7千万年前に終わった氷河期のうち、2億8千万年前から形成され始め、氷河期最後の1000万年間に形成されたという、地球の歴史を知る貴重な地質となっています。南米にも氷河期があったことを示すもので、海水と淡水が入り混じっていたことがあり、塩分を多く含む地層も見られます。ヴァルビートはかつては無制限に採掘されていましたが、現在は科学調査の資源ということで禁止されています。


サンパウロ州イトゥー市のヴァルヴィートという地質を保存する公園

サンパウロ州イトゥー市のヴァルヴィートという地質を保存する公園

 このヴァルビート公園は地元の観光名所ですが、隣接する水力発電所を通過する川が汚染水で泡だらけになっており、すっかりそちらも暗黙の名所のようになっています。3億年前という悠久の自然史と対比して現在の環境汚染が浮き彫りです。


イトゥー市のヴァルヴィート公園の横を流れる川に浮かぶ汚染水の泡

イトゥー市のヴァルヴィート公園の横を流れる川に浮かぶ汚染水の泡

 日本の学校の教科書でも世界の代表的な公害としてブラジルの泡だらけの川の写真が掲載されていましたが、実際に見るとなんとかならないものかと思わずにはいられない汚染水模様です。そんな川にも魚はまだ生息しているそうで、まだ救いようがある気もしてきます。


ヴァルヴィートという地質に見られる塩分の様子

ヴァルヴィートという地質に見られる塩分の様子

 風光明媚(めいび)な自然遺産を多く有するブラジルの負の一面。再び元の自然に回復できる日が来るのでしょうか。


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