ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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対馬の烏帽子岳展望所で記念撮影する韓国人旅行者

対馬の烏帽子岳展望所で記念撮影する韓国人旅行者

 今、日本各地の訪日外国人旅行者の中で最も印象的なのは、一般的に中国人かもしれません。それでも博多に行けば韓国語を耳にする割合が高まる印象で、そこから玄界灘を渡り対馬に到着すれば、圧倒的な存在感の旅行者は韓国人です。

 対馬の現地ガイドのお話では、東日本大震災でそれまで少しずつ増えていた韓国人旅行者が激減し、それを打開するためにお得な対馬旅行プランが組まれて人気を博し、雨後のタケノコのように韓国系の旅行会社やバス会社が対馬に設置され、韓国人向けの対馬旅行が企画されたということです。近年では年間約40万人の韓国人旅行者が対馬を訪れ、対する日本人旅行者数は約3万人ということです。


対馬の烏帽子岳山頂に向かう韓国人旅行者ら

対馬の烏帽子岳山頂に向かう韓国人旅行者ら

 その数値を物語るかのように、どこの観光名所に行っても、特に風光明媚(めいび)な観光地やパワースポットでは、圧倒的多数の韓国人旅行者が列をなし、対馬旅行を満喫しています。

 韓国の釜山からは約49.5キロ、博多からは約145キロの地理的条件を考えれば当然の結果ですが、日本史の視点から見ると、日本に暮らす人こそ再確認しても良い史跡名所も凝縮しています。島内各地の絶景や新鮮な旬の魚介類とともに日本からの観光客が増加してもよいはずの国境の島です。


対馬北部の展望所から眺める釜山の風景

対馬北部の展望所から眺める釜山の風景

 ブラジルからの旅行者は、韓国も日本も同じ極東という感覚が強く、旅行計画でも、博多と釜山の間を船で往来し、2カ国を満喫するという方もいます。その間にある壱岐、対馬の存在も意外と知られており、上陸こそしなくても、情報さえあれば旅してみたいと思う人もいるに違いありません。


神武天皇の親の物語が語り継がれる和多都美神社

神武天皇の親の物語が語り継がれる和多都美神社

 韓国人旅行者は美しい自然の観光地や免税店に多いのに対し、日本史に関連する史跡名所には少なめなのも印象的です。

 日本史を改めて振り返ると、遠くは神武天皇の産みの親の対馬での物語から、魏志の倭人伝に登場する対馬国、元寇が最初に上陸した日本の地であり、韓国との歴史論争で登場しがちな豊臣秀吉の朝鮮出兵の最前線、江戸時代には徳川幕府になくてはならなかった朝鮮貿易の拠点が対馬藩で、釜山には出島と並んで幕府が認めた海外公館の倭館が設置されていました。そして日露戦争の日本勝利を決定付けた海は対馬沖で、ブラジルを含めた海外で学ぶ世界史でも「対馬の戦い」という名前で知られています。それらにゆかりある史跡も見所です。


朝鮮貿易で重要な位置を占めた対馬藩の当主が眠る日本三大墓所の一つ万松院

朝鮮貿易で重要な位置を占めた対馬藩の当主が眠る日本三大墓所の一つ万松院

 日本人観光客が少ない現実を目の当たりにするとショックであると同時に、国境最前線で頑張って生活されている方々の優しさや明るさに触れると、もっと日本の人も行くべき旅行先ではないかと言う思いが湧いてくる、魅力ある国境の島、対馬です。


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