ブラジル

ブラジル:サンパウロ

大浦 智子(おおうら ともこ)

職業…フリーランス
居住都市…ブラジル国サンパウロ市

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ブラジルの新型コロナウイルスワクチンの一つ

ブラジルの新型コロナウイルスワクチンの一つ

 「1月下旬に新型コロナウイルスに対する1回目のワクチンを受けるという連絡が来ました。そして3週間後に2回目を受けると聞きました。それでも、2回目を受けたと聞くまでは、「次はいつ面会できますか」とは尋ねません。

海外のニュースではワクチンが不足して急に届かなくなった話が報道されており、ブラジルでもいつ何が起こるか分かりません。再会できると希望を持って、また会えなくなると落ちこみますので」

 1月中旬からブラジルでも新型コロナワクチンの接種が始まるとニュースが流れ始めました。高齢者や医療従事者を優先するということで、ブラジルのサントス市にある日本人や日系人の高齢者が入居する養護施設サントス厚生ホームでも、ワクチン接種の連絡が家族に知らされました。

 3年前から85歳の母親が同ホームで入居しているサンパウロ市在住の沢田洋子さん(仮名)は、パンデミックになるまでは毎週、母親との面会に訪れていました。しかし、昨年3月に新型コロナウイルスによる外出自粛が始まって以降、同ホームでは家族でも面会に来るのは禁止となり、彼女もこれまで10カ月以上面会ができないまま過ごしてきました。


サントス厚生ホームで過ごす高齢者(パンデミックの前)

サントス厚生ホームで過ごす高齢者(パンデミックの前)

 サントス厚生ホームは1974年に日系の高齢者向けに開所しました。この50年近く、これほどの長期間、普通の家族が面会禁止になったことはありませんでした。

 同ホームに親を入居させ、子どもや親戚はサンパウロ市に暮らしているケースも少なくありません。サンパウロ市からは車で1時間ほどで、1、2週間に一度は親の顔を見に訪問に行くというように過ごしてきた家族も多くいます。

 毎年、同ホームでは様々なイベントを実施して、入居者の家族が親睦を深められるような場を設け、いつもは静かな施設がにぎやかになる日もありました。昨年はその様なイベントもブラジルの全てのイベントと同様に実施されませんでした。 


サントス厚生ホームでクリスマスにオンラインを通して販売されたマスク

サントス厚生ホームでクリスマスにオンラインを通して販売されたマスク

 「いつもテレビ電話で母の様子は知らせていただけていて、近況は分かっているので安心しています。それでも近くに暮らしているのに会えない状況がいつまで続くのか分からないと思うと・・・」と沢田さんは言葉を詰まらせます。

 サントス厚生ホームではオンラインを駆使して、入居者とその家族をつなぐことにも積極的に取り組んできました。クリスマスには、入居者に家族が写真で選んでマスクを購入できるというプレゼントのサービスも実施しました。

 「ほんとうに明日のことは見えないですが、自分の心身のケアして母と再会できる日を待ちます」と、沢田さんはもう少しの辛抱と心得て前向きな日々を過ごします。


パンデミックまでは例年開催されていたサントス厚生ホームでのイベントの様子

パンデミックまでは例年開催されていたサントス厚生ホームでのイベントの様子



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