ブラジルに公式のドイツ移民が来てから今年で200年
2024.06.09 up
移民博物館に設置されたブラジルのドイツ移民200周年の記念モニュメント
ブラジルは移民が発展させてきた国です。ブラジルが独立した1822年以降、初期に到着した移民がドイツ移民で、公式には1824年に最初の移民が到着しました。今年はドイツ移民が到着して200周年となり、各所でイベントが行われています。
6月1日にはサンパウロ州の移民博物館(Museu da Imigração)でブラジルのドイツ移民200周年を記念するイベントのオープニングセレモニーが開催されました。この博物館はかつては移民収容所と呼ばれ、日本人移民も含めた世界各国から到着した移民が通過した施設でした。
館内の入り口では、記念品にパスポートを模したメモ帳が配布され、来場者の気持ちをワクワクさせました。今回は特別展としてブラジルのドイツ移民の歴史を紹介するコーナーや博物館の庭にはドイツ料理を提供する屋台やショーステージが設けられ、多くの家族連れでにぎわっていました。
移民博物館
ブラジルに来た最初のドイツ人は植民地時代の16世紀にさかのぼり、ハンス・スターデンというドイツの兵士であり探検家でした。彼はブラジルのトゥピナンバ族という先住民に捕らえられ、なんとか生き延びてヨーロッパに戻りました。ブラジルでの体験記を後世に残し、その中で、彼が捕えられていた間に先住民が人食いを行っていたというエピソードが記され、それが長らくヨーロッパ人のブラジルへのイメージの原点となりました。
公式移民が訪れる直前の1818年には、バイーア州南部のレオポルジーナ入植地にドイツ移民は到着しました。これは、1808年にブラジルに遷都したポルトガル王室のドン・ジョアンの息子であるドン・ペドロにブラジルへ嫁ぎにきたハプスブルク家の王妃レオポルジーナとともに、ブラジルを開拓するために呼ばれたドイツ移民でした。しかし、その気候風土がドイツ人には合わず、その入植計画は上手くいきませんでした。
移民博物館で配られたパスポート風のブラジルのドイツ移民200周年の記念品
公式の最初のドイツ移民は1824年、ブラジル南部のリオグランデドスル州の現在のサン・レオポルドに到着しました。皆、ドイツでは様々な職業を持っていましたが、最初は農業に従事しました。
ドイツ移民と言われますが、それまでのドイツは様々な地方が独立していたため、正確には「ドイツ語を話せる移民」という言われています。
最初の移民はシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州や当時のメクレンブルク=シュヴェリーン公国、ラインラント地方の出身者でした。現在のドイツでも国境地域と言える地域です。ドイツからの移民が来たきっかけは、かつてはヴォルガ川流域に移民していた人々に制限が加えられことなどがありました。それで、米国には既にドイツから移民が渡っていましたが、ブラジル政府も1822年の独立を機に、新しい国の開発のためにドイツ移民を呼ぶことになりました。
移民博物館のイベントに出場したドイツ系移民のダンスグループ
ブラジルの産業の発展に大きな足跡を残してきたドイツ移民ですが、特に宗教の面で大きなインパクトを与えたと言われています。それまではポルトガルのカトリックの習慣が一般的でしたが、カトリックでもドイツ式は風習が異なり、また、プロテスタントの移民も多くいました。その習慣の違いがもたらされたことで、ブラジルの文化が多様となる先駆けにもなりました。
ドイツ移民は長らく自分たちの文化を保持してきましたが、第二次世界大戦中に連合国側についたゼツリオ・バルガス政権時代に、特に移民たちの言語を使用することを禁止されるなどがきっかけとなり、ブラジルへの同化が進められました。それでも、今日まで、ドイツ系移民の誇りを保持している人々によって、ブラジルのドイツ移民200周年が記念されました。
展示室に飾られたキャベツの細切りためにドイツ移民が持ってきた道具
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