台湾

台湾:台北

小川 聖市(オガワ セイイチ)

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市(台湾)

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会場の様子

会場の様子

 昨年、アメリカの健康食品企業・WEIDER(台湾では「威徳」)が設けている奨学金授与式の様子を紹介しました。まさかその場で、奨学金を受け取る側の事情から、社会問題や地域格差などに触れることになるとは思ってもいなかったことを、今でも覚えています。

 今年も色々知ることができました。

【参考】
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=202365163946


当日招待された人々が遊んだU F Oキャッチャー

当日招待された人々が遊んだU F Oキャッチャー

 今年で4回目を迎えた授与式ですが、今回から女子ソフトボールのHSLの選手15人も対象となり、総額60万元(約283万円)が授与されることになりました。回を重ねるごとに授与の範囲を広げていきましたが、授与される側の事情も多岐に渡ってくるようです。

 以下、会場で紹介された2例紹介します。


奨学金授与の様子

奨学金授与の様子

 台湾中部の南投縣のある選手の自宅は、山奥にある「秘境」と呼ばれる地域。

 小規模の農場で、野菜の収穫を行うことで生計を立てているものの、父が6年前に肝臓がんで他界した影響もあり収入が少ない状態に陥りました。6人きょうだいの一番上の当該選手が2年時の優勝を置き土産にして休学し、家計を支えるために仕事を探そうとしている時に、コーチや周囲の大人の協力で、ソフトボールの企業リーグのチームに入部することができました。そのおかげで学業も競技も継続することができ、卒業後の進路も、大学進学が決まっただけでなく、U-18の代表候補の合宿にも参加、と成果をあげることができました。

 前出の選手のチームメイトの例も紹介されていて、5年前に自宅が競売にかけられて母の実家に戻ったものの、父がその2年後に交通事故に遭い他界するという困難に陥った話もありました。


記念撮影用のボード

記念撮影用のボード

 台湾南部の屏東縣の姉妹は、どちらもバレーボール選手。

 8年前から祖父母のところで暮らし始めましたが、2年前に交通事故で祖母が他界。翌年には祖父も直腸がんが分かり、闘病が始まりました。妹が強豪中学のバレーボール部入部で自宅を離れて寮生活に入ったことに加え、法律上、世帯主が姉になっていることを受け、姉は祖父の面倒を見るために自宅から通学できる高校に通うことになりました。

 中学卒業後、そのまま地元屏東の強豪校に進学した妹とは対照的に、姉のチームは部員が7人しかおらず、負傷者が出て人数不足による没収試合も経験しました。そうした困難に負けず、姉のチームは今年のHVLで二次予選に進出する健闘を見せただけでなく、研究熱心な姉が大きく貢献しました。

 バレーボールは北部と中部の強豪校に人材が流れる傾向にあるのですが、その流れに逆らう格好になった姉妹の事例でもあります。


過去に奨学金を授与された選手たち

過去に奨学金を授与された選手たち

 最後に、過去に奨学金を受け取った選手4人が来場し、自身の経験を語りました。

 進行役が、各選手に奨学金の使い道について聞いていましたが、多かったのは、自分の学費・雑費の支払いでした。スポーツの選手らしく、「手術費用にした」というのもありましたが、中には「家族の医療費の負担に使った」というのもありました。

 「家族の医療費」というのも使い途の一つとしてはありなのかもしれませんが、自身の学業と競技の継続のために全額使えないのを知り、支援の難しさを感じました。

 台湾の社会問題も知る場でもあるので、引き続き見ていきたいと思います。


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