台湾

台湾:台北

小川 聖市(オガワ セイイチ)

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市(台湾)

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決勝戦の様子

決勝戦の様子

 前日の準決勝に勝利し、初めて決勝に上がった台北市立第一女子高級中學(通称:北一女、ベイイーニュィ)。決勝も気迫と気迫がぶつかり合ういい試合になりました。

 決勝の相手は、以前紹介させていただいたことがある佛光大學(フォーグワンダーシュエ)の系列校・普門高中(プーメンガオジョン)。昨年は、準決勝リーグ直前のインフルエンザ禍に苦しみ7位、一昨年は準優勝、2009年は優勝、と実績は十分。過去2年の悔しさから、「今年こそ!」という気持ちを前面に出し、準決勝リーグ7戦全勝で決勝トーナメントに上がってきました。


残り10.8秒で3ポイントシュートが決まった直後。コーチに頭をなでられるキャプテンの張宇涵(ジャン・ユゥイハン)

残り10.8秒で3ポイントシュートが決まった直後。コーチに頭をなでられるキャプテンの張宇涵(ジャン・ユゥイハン)

 北一女が2月の準決勝リーグで、普門高中と対戦したときは、38ー70の大敗。
 多くの人が北一女の勝利を予想できなかった組み合わせですが、試合が始まってからは、抜きつ抜かれつのシーソーゲームになりました。

 第2Q終了時に、普門高中のブザービーターが決まって25ー30の5点ビハインドも、第3Qは北一女が反撃し、最大8点差をつけます。
 しかし、戦力と自力に勝る普門高中が第4Qで逆転し、残り1分を切ってからもリードを保ちます。残り23.4秒で、普門高中の2点シュートが入り、62ー65。北一女に敗色濃厚の雰囲気が漂い始めた残り10.8秒のことでした。

 上の写真の張宇涵が放った3ポイントシュートが、ボードに跳ね返ってリングに吸い込まれ、65ー65と同点になります。同点直後のタイムアウトが終わり、普門高中のボールで再開されますが、北一女はその猛攻をしのぎ切り、そのまま65ー65で終了。


延長戦を制し、歓喜の瞬間へ

延長戦を制し、歓喜の瞬間へ

 延長戦は、序盤こそ67ー67となりますが、そこからは同点ゴールで勢いをつけた北一女が一気に突き放し、最終スコアは75ー69。試合終了直後は、上の写真のように現役の選手だけでなく、応援に駆けつけたバスケットボール部のOGらが一斉にコートに駆け寄り、喜びが大爆発しました。

 その傍らで、駱燕萍(ルオ・イェンピン)ヘッドコーチ(以下HC)の目には、前日同様に涙が光り、チームスタッフや引率の先生たちと抱擁を交わしました。


校長先生と歓喜の抱擁を交わす選手たち

校長先生と歓喜の抱擁を交わす選手たち

 それから、恒例の円陣を組んでの声出し。
 多くのOG達が円陣に加わり、コートのセンターラインが直径になるくらい円陣が大きくなりました。

 その後は、先生、コーチ、選手、OG、父兄らが入り交じっての歓喜の抱擁。みんなで涙を流し、泣声があちこちで聞かれました。流した涙の量は、悔し涙の昨年以上。

 昨年から、選手たちの成長の過程を見てきた私も、気がつけば涙が止まらない状態でした。


表彰式前に行なわれた胴上げ

表彰式前に行なわれた胴上げ

 表彰式の前には、駱HCによるゴールネットのカットと、上の写真のように選手たちによる胴上げが行なわれました。


 台湾で1、2を争う進学実績を誇る北一女は、バスケットボール部の強化に力を入れています。しかし、選手たちはそれ故に優遇されているのではなく、一般入試で入学してきた学力が高い他の生徒と一緒に勉強し、学力向上に努めています。
 通常の授業・勉強と平行して練習しているため、他の強豪校よりも練習時間や環境で恵まれない中で、駱HCたちは地道にチームを鍛えていきました。

 そして、北一女の選手たちが今回のHBLで、他のチームより光っていたのは、仲間がミスしても表情一つ変えずにそれを取り返そうとする“心”。その“心”を大切にした選手たちを、コーチたちは最後まで信じ、選手たちもコーチだけでなく横にいる仲間たちを最後まで信じました。

 準決勝で対戦した淡水商工(ダンスイシャンゴン)のキャプテンで、U-19台湾代表の実績がある林育庭(リン・ユィティン)が、自身のfacebookのHPで、
 「ありがとう、北一女。私たちに比べ物にならないくらいの不屈の闘志と気迫を見せてくれて」
 というメッセージを残しました。彼女のメッセージは、北一女への最大級の賛辞であると同時に、メディアから「緑色奇蹟(リュイスージーチー:緑の奇跡、緑はスクールカラー)」と呼ばれた優勝の真実があるように思います。


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