台湾の高校バスケHBL 成長の証
2015.01.20 up
敗者復活戦の初戦より
前日の師弟対決を乗り越えた台南市私立新榮高級中學(以下、略称の新榮高中)は、2次予選のリーグ戦で2勝3敗の5位に終わり、3位以内に入ることができなかったため、敗者復活戦にまわることになりました。2次予選のリーグ戦で5位以下のチームの敗者復活戦は過酷で、1日に2勝しなければその先はありません。
新榮高中の場合、まず15:00に反対の組の6位(最下位)のチームと試合をし勝利後、19:10に反対の組の4位と対戦という非常に厳しい道のりが待っています。
初戦は、新北市立三重高級商工職業學校(以下、三重商工)との対戦。三重商工は2次予選では1勝4敗と不調でしたが、過去には5位を2回達成している強豪の1つで、侮れない相手です。
この試合の新榮高中は、序盤から外からのシュートが立て続けに決まり、試合を優位に進めていき、59-45で勝利。全選手が12~23分の間でバランスよく出場し、次戦へ向けて体力を温存していきました。
敗者復活戦第2戦より
19:10からの次戦は、台北市私立強恕高級中學(以下、強恕高中)との対戦ですが、試合開始約3時間前に試合をしている新榮高中に対し、強恕高中は待っている側。強恕高中も過去3位2度と実績も実力もあり、新榮高中にとってはハンディキャップマッチとも言える試合です。
そこで新榮高中の選手たちが見せたのは「成長の証」でした。
チームメイトに痛めている右脚をマッサージしてもらう杜思汗(トゥー・スーハン・右))
試合は、いい意味で吹っ切れ、肩の力が抜け、リラックスした状態で試合に臨めている新榮高中が序盤から優位に進め、第3Q途中までで最大22点差をつけます。ところが、1日2試合の疲労がじわじわ出始め、強恕高中の選手たちの気迫にも押され、第4Qの残り3分40秒前後のところで59-56と追い上げられ、徳俵に足がかかった状態になりました。
このような展開では、追い上げられる側がそのまま逆転され、押し切られるように試合が終了していくことが多いですが、強恕高中の選手たちは点差が縮まったことで勝利を意識したのか、ミスを連発しはじめたのに対し、新榮高中の選手たちはそのミスを的確に突き、得点を積み重ねていきました。
追い上げられたときに、チームを押し上げる底力の源になったのが、上の写真の杜思汗。彼は176cm、73kgと小柄ですが、外からの高いシュート力が武器で、1年のときのHBLで準優勝に貢献し、新人王を獲得しただけでなく、昨年8月のU-18アジア選手権の代表にも選ばれた好選手です。しかし、精神的にもろく弱いのが欠点で、慢性的な右脚の故障と合わせ、すぐに調子を落とし交替してしまうことも多く、それが前任のコーチたちの心配の種でもありました。昨年11月からのHBLでは、右脚の故障だけでなく、新コーチ就任に伴う練習環境と戦術の変化で思うようなプレーができず、試合後に悶々としたやるせない表情を浮かべている姿を見かけました。
それでも、この試合では猛烈に追い上げられているときのタイムアウト時、ベンチへ右脚を引きずりながら帰ってきた彼は、マッサージをしてくれたチームメイトに対し、「大丈夫、大丈夫。オレ、行けるからさ」と言い、そのまま出場し続け、攻守で要所を締め、チームメイトを鼓舞する活躍を見せました。
いつもなら、そのまま交替してベンチにいることが多かった彼ですが、その選手がチームのピンチで見せた気迫は、チームが一つにまとまり、変わるきっかけを作りました。
勝利後、応援席にあいさつし、ベンチへ一人戻る杜思汗ですが……
杜思汗の気迫に引っ張られた他の選手も奮闘し、最後は新榮高中が69-59で勝利し、歓喜の瞬間を迎えました。
応援席へあいさつをし、一人ベンチへ戻った杜思汗は……
廖浚輝(リャオ・ジュンフイ)前コーチの胸で男泣き
真っ先に応援に駆けつけていた廖浚輝前コーチの胸に飛び込み、苦しかった自分の気持ちを爆発させました。
新榮高中が強恕高中の猛攻をギリギリのところでしのぎ切れたのは、杜思汗が見せた「このまま終わってたまるか」という気迫と、選手たちの「恩師(以前紹介した田本玉前コーチと廖浚輝前コーチ)から学んだものは正しかったことを証明したい」という気持ちがあったからかもしれません。
環境の変化からどん底に近いところまで落ち、恩師とのお別れの儀式を終え、精神的に強くなった姿を見せた新榮高中の選手たちの次の舞台は2月3~9日の準決勝リーグ。そこで選手たちはどんな姿を見せてくれるでしょうか。
今から楽しみです。
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