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山が動いた 台湾立法委員選挙
2016.01.29 up
丁守中(ディン・ショウジョン)氏 *2014年8月9日のジョーンズカップ開会式より
1月16日の台湾総統選挙と同時に行なわれた立法委員(日本の国会議員に相当)の選挙では、民主進歩党(以下、略称の民進党)が40議席から68議席と単独過半数(全113議席)をとり、国民党が64議席から35議席に数を落としました。
日本の政治で、「山が動いた」という名言がありましたが、今回の選挙はその言葉がピッタリ当てはまるような結果でした。
まず、上の写真の丁守中氏。
丁氏はバスケットボール協会理事長だけでなく、合計7期23年立法委員を務めている国民党の現職。故宮博物院がある士林區、北投區の台北市第1区で盤石の態勢を築いてきました。
今回の選挙では、台北市議会議員を3期務めた民進党の新人・呉思瑤(ウー・スーヤオ)氏に13,000票あまりの差をつけられ、落選しました。
郝龍斌(ハオ・ロンビン)氏 *2014年8月9日のジョーンズカップ開会式より(当時は台北市長)
上の写真の郝龍斌氏は、2006~2014年に台北市長、任期満了で退任後は国民党の副主席と実績がある政治家の一人です。
ちなみに、郝氏の前に台北市長を務めたのは現総統の馬英九氏。馬英九氏の前に台北市長を務めたのは陳水扁氏で、こちらも馬英九氏の前に総統を務めました。
このような事情から、郝氏は総統選挙の国民党公認候補の一人と目されていましたが、最終的に台北市近郊の基隆市選挙区から立候補。元台北市長が台北市ではない選挙区で立候補するのは不思議な感じですが、報道などから判断すると、基隆市での不利な状況を変えるための「刺客」という感じで立候補したようです。
こちらも民進党の新人で基隆市市議会議員の蔡適應(ツァイ・シーイン)氏に10,000票あまりの差をつけられ、落選。落選と同時に、国民党副主席を辞任しました。
1月17日付け蘋果日報(アップルデイリー)のA21面より
前出の国民党の「大物」候補者の落選だけでなく、20~40代前半の若い世代の台頭も目立ったのが、今回の選挙の特徴です。
以下、上の写真の新聞記事をもとに紹介します。
下から二段目に登場する呂孫綾(ルー・スンリン)氏は、現在27歳で中國文化大學政治学研究所博士課程に在学中。私が住んでいる淡水區をはじめ市の北部にあたる新北市第1区の民進党公認候補です。
父親は新北市(台北縣)の議員を8期32年務めた呂子昌(ルー・ズーチャン)氏ということで、「親の七光り」と陰口も言われたようですが、国民党の現職で4期目の当選を目指した呉育昇(ウー・ユゥイシェン)氏に25,000票あまりの差をつけ、当選し、最年少委員になりました。
上から1段目の洪慈庸(ホン・ズーヨン)氏(33)は台中市北部の第3区、3段目の林昶佐(リン・チャンズオ)氏(39)は龍山寺がある萬華區を含む台北市第5区で、いちばん下の黄國昌(ホワン・グオチャン)氏(42)は観光名所の九份がある瑞芳區など基隆市に隣接する新北市第12区で、それぞれ6期目以上の当選を目指した国民党の現職をそれぞれ敗って当選しました。
この3名の所属政党は、2014年3~4月に起きた学生運動(下記URL参照)がきっかけになって昨年誕生した「時代力量(シーダイリーリャン・New Power Party)」という新しい政党です。
http://www.ima-earth.com/contents/search.php?userid=seiogawa&year=2014&mon=4
「時代力量」は、民進党と選挙で協力体制を築いたこともあり、前出の選挙区3人のほか、比例区でも2人当選。民進党(68議席)、国民党(35議席)に次ぐ、第3勢力になるまで台頭し、若い世代の力を見せつけた象徴的存在になりました。
1月17日付け蘋果日報(アップルデイリー)のA22面より
上の写真は、落選した国民党の主要候補者の新聞記事ですが、国民党が特にダメージを受けたのは、党主席だった朱立倫氏(注:落選後に党主席を辞任)に縁がある地域。朱氏は桃園縣(現在の桃園市)出身で、桃園縣の縣長を2期務めましたが、その桃園市の6つの選挙区中、議席を確保できたのは2選挙区のみ。
また、現在市長を務める新北市の全12選挙区でも、議席を確保できたのは2選挙区のみ。市長職に戻った朱氏の今後の施政にも影響が出そうです。
支持者の前で一礼する朱立倫候補をはじめとする国民党幹部たち
ここまで「山が動いた」背景は、20~40代前半の若い世代が動き、その年代の議員の数が増えたことにあるように思います。
その若い世代が、政治をどのように変えていくのか。
女性初の総統となる蔡英文(ツァイ・インウェン)新総統と共に、注目を集めそうです。
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