
デザルプ(牧下り)の様子。シャルメー(Charmey)村にて。
毎年9月~10月にかけて、筆者の在住するフリブール州で『ベニション(Bénichon)』のお祭りがあります。
ベニションというのは、いわゆる秋祭り、収穫祭のようなイベントで、神への感謝を表す<ベニッソン(bénissons)>という言葉から来た、およそ15世紀頃から続く伝統行事なのだとか。
春から夏の間、山間部に放牧されていたウシやヤギたちを、ふもとの村へ戻すため、花飾りをつけ、大きく立派なカウベルを身につけたウシたちが、牧童や村人たちと共にパレードをする『デザルプ(牧下り)』が行われたり、工芸品やベニション用の特別料理の屋台やテントが出たり、更にスイスの伝統音楽や楽器で、ダンスが始まったと思えば、荷車で干し草競争といった素朴なゲームがあったり…と、秋の典型的な収穫祭といった感じのお祭りです。

ベニションの伝統料理は、大きなハムやソーセージ、そして温野菜。
フリブール州は、酪農業が盛んな地域であるため、ベニションのお祭りは有名行事にもなっています。
例年、平地では毎年9月の第2日曜日に、そして山岳部は10月の第2日曜日を基準日として、ベニションが行われるそうなのですが、今年は新型コロナのため、やむなく中止や縮小をせざるをえない自治体がほとんどでした。
特に人気が高く、多くの人出がある、デザルプのパレードは、今年はテレビで生中継されました。

サフラン入りのクショールと呼ばれるパンも、軽い口触りで食べやすいです。
そんなフリブール州でのベニション(秋祭り)ですが、このお祭りの時に食べるごちそうが、ボリュームたっぷりで、美味しいのですが完食が難しいシロモノ。酪農が盛んな州なだけあり、この時に良く食されるものは、分厚くてジューシーな大きなハム、そして大きなソーセージやサラミを大きく輪切りにしたもの。これをジャガイモやニンジン、キャベツなどの温野菜と共にいただきます。
クショールと呼ばれる丸くて大きなパンも忘れてはいけません。外側はこんがり美味しそうな色をしており、中身はサフランが入っているため、黄色をしています。ほんのり甘く、いくらでも食べられそうな味です。

ベニション・マスタードが、スーパーマーケットの棚に多く並んでいました。
地元の人々はこのクショールにベニションマスタードなるものをたっぷり塗って食べます。
<マスタード>という名前がついていますが、穀粒がたっぷり入っていて、更にシナモンやアニスといったスパイス、小麦粉、白ワインなどが、梨など季節のフルーツを甘く煮つめたバン・キュイというソースなどと混ぜられてつくられるので、焦げ茶色をしています。味も濃厚で面白い味がします。
9月初めから、これらベニション関連の食材がフリブール州のスーパーマーケットの棚にたくさん並び始めると、スイスの秋をとても感じます。そして長くて寒い冬が来る前に、秋の美味しい物を食べつくして、冬眠前のアルプスマーモットのようにコロコロ丸くなってしまうのです(苦笑)。
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