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台湾:台北

小川 聖市(オガワ セイイチ)

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市(台湾)

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昨年11月の1次予選時の様子(台北體育館)

昨年11月の1次予選時の様子(台北體育館)

 今年3月に開催されたHBLの決勝トーナメントは、男女の決勝とも最後の1分まで結果が読みにくい展開になりました。特に男子決勝は最後の1分で激しい点の取り合いになり、今までにない緊張感と熱狂に包まれました。

 その決勝を戦った2チームには、それぞれ抱えた事情がありました。

 今回は新竹市にある私立光復高級中學(以下、光復高中)です。

 光復高中がHBLの甲級に参戦したのは2015年からで、歴史が浅いチームです。HBL参戦は、以前紹介した田本玉ヘッドコーチ(以下、HC)の下でアシスタントコーチ(以下、AC)を務めていた陳定杰コーチが光復高中のHCに就任してからのことです。

 田HCが長年指導していた新榮高中を離れ、高雄市にある私立高苑工商職業學校(以下、高苑工商)に移ると同時に陳コーチも移り、ACに就任。1年務めた後、光復高中のHCとして「独り立ち」するような形で就任しました。

【参考】

http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=20151515153


昨年12月の2次予選の様子(高雄アリーナ)

昨年12月の2次予選の様子(高雄アリーナ)

 その後、なかなか思うように勝てず、本来なら他チームのコーチである田本玉HCが応援に駆けつけ、身を乗り出して声援を送る光景もありました。その苦境も乗り越え、2019年にはじめて台北アリーナの決勝トーナメントに上がり4位。

 2020年は直前に決まった無観客での開催が影響したのか、本来の力が出しきれずに5位に終わったものの、昨年は再度台北アリーナの舞台に立ち、3位と過去最高の結果を残し、今年を迎えました。

 今年は1次予選、2次予選とも全勝で準決勝リーグに進出する成長ぶりを見せましたが、一方で陳HCの母校の新榮高中が昨年10月の予備予選開催前に新入部員の受け入れ停止とチームの解散を発表しました。1枚目の写真に写っているのが新榮高中の選手たちですが、1次予選では三戦全敗で敗退が決まると同時に解散が決まりました。

 さすがに陳HCは他チームのコーチとしての立場を考慮してか、会場での直接の応援は控えている様子でしたが、以前母校への思いを伺っていたことがあるので、どんな気持ちで見ていたのだろうかと、思いを巡らせました。


試合後のミーティングより

試合後のミーティングより

 準決勝リーグは、2日目に自身がコーチを務めた高苑工商に破れただけでなく、主力選手の1人が故障で欠場したことで、その後の試合への影響が懸念されましたが、残り試合は全勝で全体1位で決勝トーナメント進出を決めました。
 
 しかし、勝った試合の中には内容が伴わず、危機感が感じられないものがあったため、試合終了後に厳しく叱責するシーンも見られました。


決勝の最後のシュートが決まる直前の様子

決勝の最後のシュートが決まる直前の様子

 台北アリーナの決勝トーナメントは、準決勝で前年ブザービーターで敗れた新北市立泰山高級中學に78ー63と序盤から圧倒して勝利し、決勝に上がりました。

 決勝は、2年連続で上がってきた私立南山高級中學(以下、南山高中)。

 2月の準決勝リーグでは最終戦で対戦しましたが、両者とも前日までに1、2位で決勝トーナメント進出を決めていたこともあり、半ば両者の調整試合という感じになりました。決勝トーナメントは1位は4位、2位は3位と戦うことになるので、1、2位の順位付けも重要といえば重要ですが、8日間で7試合している疲労を考慮し、主力選手の故障を防ぐ必要も出てくるので、チームによっては調整に当てられることもあります。2月の試合は85ー71で光復高中が勝ったものの、この結果がどこまで参考になるかは見えにくいところでもありました。


家族と優勝を喜び合う陳定杰HC

家族と優勝を喜び合う陳定杰HC

 決勝は、お互いに点の取り合いになり、最後の1分を切ったところまで気が抜けない展開になりました。57ー57で迎えた最後の1.93秒で4枚目の写真にあるシュートが入り、59ー57で終了。

 優勝が決まってから、陳HCは着ていた上着を脱ぎ、あらかじめ着ていた高校時代のユニホームを見せ、母校と恩師の田HCへの思いを爆発させました(上の写真)。

 前記の解散が決まった母校への思いは、下記URLにある試合に応援に来ていた際に伺いましたが、「2日前の対戦相手のコーチという立場では応援しにくかったのでは?」という質問に対し、「確かに立場は違うけど、自分は新榮高中の卒業生。選手たちも(自分が)離れるまで見ていたし、後輩に当たるので、(母校への)思いは特別」と語っていました。

【参考】
 
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=201511213711

 高校時代の恩師でもあり、大学卒業後、ACとして指導法などを学ぶ機会を提供してくれた田HCは昨年から國立台湾體育運動大學のHCに就任し、高校の指導からは一線を引き、陳HCら教え子たちに託す格好になりました。

 高校時代のユニホームの体への密着ぶりが、時の長さを感じさせましたが、解散する母校への惜別、恩師の田HCへの感謝と悲願達成へのアツい気持ちがストレートに出た瞬間でした。

 次回は、もう一方の南山高級中學を紹介します。


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