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台湾:台北

小川 聖市(オガワ セイイチ)

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市(台湾)

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蔡宛真監督

蔡宛真監督

 先日、長野県の高校の女子バレーボール部で指導の中で選手たちが前髪を切っていたことが大きく報じられました。その後調べていったら、現場での体罰やハラスメントに関する報道が多数出てきて、さらには小学生の選手が指導者の体罰に加え、指導者と周囲の保護者による隠蔽の被害に遭い、PTSDを患い、2020年10月の時点で法廷に持ち込まれている事例もあることも分かり、驚いています。

【参考】
https://www.yomiuri.co.jp/national/20230429-OYT1T50160/
https://toyokeizai.net/articles/-/382317
https://vbm.link/652954/
https://www.j-cast.com/tv/2023/04/05459281.html?p=all

 このような原因としてに挙げられるのが、「バレーボール」というスポーツが持つ「ミスした瞬間に1点取られる。その積み重ねがバレー(日本バレーボール協会・川合俊一会長より。引用:https://www.chunichi.co.jp/article/654694)」という競技が持つ特徴からくるものと思われます。最近では、元日本代表選手の益子直美さんが「監督が怒ってはいけない大会」を開催し話題になっていますが、体罰やハラスメント撲滅への道のりはまだまだのようです。

【参考】
https://vbm.link/59182/
http://masukonaomicup.com

 日本の報道を受け、今回は今年3~4月に開催された台湾の中学バレー・JHVL、高校バレー・HVLで見てきた指導者の様子を紹介します。


選手と同じ目線で笑顔

選手と同じ目線で笑顔

 まずは、JHVLの女子3位決定戦で見かけた指導者。

 台北市立明湖國民中學の蔡宛真監督は、試合中、常に選手と同じ目線で喜び、笑顔をたくさん見せていました。

 失点が重なると笑顔が消えることもありましたが、それでも怒気を含んだ表情は一切見せず、選手を不安にさせないよう配慮しているように見えました。


タイムアウト時も笑顔を絶やさず

タイムアウト時も笑顔を絶やさず

 蔡監督を見ていると、「あたしは何をやっても怒らないから、やりたいようにやればいいのよ」という感じで、選手たちにコート上でのびのびプレーさせている印象を受けました。

 2年前の大会後のコメントに「過剰な上下関係を設けず、選手たちの姉のような感じで接していき、チームの状態の把握に努めたが、これが有効で、合っているように感じた」というものがあり、そのやり方が浸透しているように見えました。

 私が観戦した試合はファイナルセットまでもつれる展開で2ー3で敗れ、4位に終わりましたが、来年以降成果が出て、優勝に一歩でも近づけることを祈ります。

【参考】
https://volsports.co/blog/2022/03/09/110jhvl-4/
https://www.ydn.com.tw/news/newsInsidePage?chapterID=1349496&type=immediate
https://oursport.tv/news/9f116c
https://today.line.me/tw/v2/article/RBOv2Jj

【当日の試合】
https://www.youtube.com/live/pZ2DDW-NHGg?feature=share


劉忠賢監督(奥で選手たちが喜ぶ姿を見つめている黒のポロシャツの男性)

劉忠賢監督(奥で選手たちが喜ぶ姿を見つめている黒のポロシャツの男性)

 今年のHVL女子ではじめて優勝した新北市立鶯歌高級工商職業學校は、2015年創部の比較的新しいチームです。チームを創部から率いる劉忠賢監督は、階段を登るように少しずつチームを強化し、成果を上げていきました。

 試合中の劉監督の様子をじっくり見ていると、表情が厳しい時はあるものの、怒鳴り声や選手たちのミスを叱責するような声を上げている様子は全くなく、選手と同じ目線で試合に臨んでいる感じでした。


訪れた歓喜の瞬間

訪れた歓喜の瞬間

 選手たちを徹底的に信頼し、コート上での判断を尊重しているように見えました。タイムアウトで選手たちが集まってきた時でも、必要最小限の言葉をかける程度で済ませ、選手たちのいいところを引き出そうとしているようにも見えました。

 準決勝では、ファイナルセットで12ー14から4連続得点をあげ逆転勝利。決勝も過去に3連覇を含む5回優勝している台中市立東山高級中學にセットカウント3ー1で勝ち、初優勝を決めました。

 過去の記事を検索してみたら、「自分と選手たちが、年が離れているという感覚を持たないよう、選手たちの受け止め方に注意し、チーム内で何かあった時は時間を見つけて一緒に解決まで導き、チームの成長につなげていった」という劉監督の話が出てきました。

 余計なことは一切言わず、また一切せず、選手たちを最後まで信じ切ってじっと様子を見つめている様子でしたが、得点が入ったら選手と一緒に喜ぶのは前出の蔡宛真監督と同じでした。

 この時の劉忠賢監督の姿は「男性コーチが、どのようにこの年代の女子の選手と接していくか」という問いに答えの1つを出しているように映りました。

 日本の学生スポーツの現場で、指導者による体罰やハラスメントが発生してニュースになるたびに、この時見た指導者たちの姿を思い出します。台湾も単に私が知らないだけで、日本同様の問題があるかもしれませんが、少なくとも、今回紹介した指導者の姿を見ている限りでは、指導者が闇雲に怒鳴ったり、叱ったりして選手たちを動かそうと考えるのは、遠い過去のことになったと感じました。

【参考】
https://sports.ltn.com.tw/news/breakingnews/4259325
https://volsports.co/blog/2021/03/28/109hvl-27/
https://sports.ettoday.net/news/1129607
https://tw.sports.yahoo.com/news/hvl-鶯歌置之死地而封后-華僑意外直落三封王-134905566.html
https://www.facebook.com/ykvsvolley/posts/pfbid0A5egbwmpNLiyY1wC4rX5ME773xgoEmwkXyKDizkmHYex7zYL43ocbvjrJ9NGVeu2l?locale=fr_CA
https://today.line.me/tw/v2/article/qoNXxY9
https://www.ykvs.ntpc.edu.tw/p/426-1000-201.php

【準決勝と決勝の様子】
https://www.youtube.com/live/26kAECP_dGk?feature=share
https://www.youtube.com/live/cIBtWXsrCRM?feature=share


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