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台湾:台北

小川 聖市(オガワ セイイチ)

職業…日本語教師、ライター

居住都市…台北市近郊の新北市(台湾)

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準決勝を勝って喜ぶ選手たち

準決勝を勝って喜ぶ選手たち

 ずいぶん前から、高校バスケH B Lを追いかけていて、以前からこちらで紹介させていただいております。それがきっかけで、学校や教育文化に興味を持ち、連絡を取り、お邪魔してその様子を見せていただくことも多くなりました。

 そのきっかけになったのは、12年前にHBLで優勝した台北市立第一女子高級中學(以下、北一女)の優勝(下記U R L参照)からですが、今年3月の決勝でその再現がありました。ただ、今回はちょっと趣が変わったものになったので、紹介します。 

【参考】
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=2012315175834
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=201231818732


決勝戦より

決勝戦より

 今年のHBLの決勝トーナメントで、女子は昨年12月の予選、今年1~2月に開催された準決勝リーグを全勝で突破した北一女が優勝の本命でした。12年前と大きく違ったのは、多くの試合で10点差以上をつけて圧倒する強さを見せていることです。選手たちも「目の前の試合を全力で戦う」というよりは、「(自分たちの技術に自信を持ち)全勝優勝を目指す」という落ち着いた感じに変わっていました。

 そうして迎えた決勝トーナメントでしたが、主力選手の一人が直前の調整試合で左膝を痛めていた影響で、出場時間に制限が出てきたため、予想以上に苦戦を強いられました。勝利したものの、会見で駱燕萍ヘッドコーチが想像以上に厳しく指摘するくらい課題を残す結果になりました。


残り10秒強の選手たち

残り10秒強の選手たち

 最後の決勝戦は、12年前と同じ高雄市にある私立普門高級中學(以下、普門高中)でした。過去2年決勝で違う相手に敗れ、悔し涙を流している3年生にとっては、悔いを残さないためにも絶対に負けたくない試合です。

 主力選手の一人に出場の制限がかかった影響もあってか、序盤、中盤は普門高中リードで進んで行きますが、第3クウォーター中盤で逆転し、その後点差を最大10点差まで広げました。途中4点差まで追い上げられましたが、ゲームの鍵になる部分で得点を上げて突き放し、68―61で勝利し、12年ぶりの優勝を果たしました。


テープにまみれながら喜ぶ選手たち

テープにまみれながら喜ぶ選手たち

 この試合で、どうしても忘れられなかったのは、3枚目の写真です。

 北一女は、最後の試合で余裕がある場合、その終了直前に3年生の選手に入れ替え、最後を締めくくるということを伝統的に行なっているのですが、この試合では、出場時間が少ない3年生の選手が中心でした。その中には、左膝の故障で出場時間が限られていた選手がいて、顔を両手で覆って涙ぐむ姿がありました。

 本人に話を聞いたら、今は笑って振り返るのかもしれませんが、少なくともこの時は「自分が出場しなかったことで負けたらどうしよう…」といったプレッシャーや過去2年決勝で負けた悔しさなどがごちゃ混ぜになったんだろうなぁと思いながら見ていました。


学校関係者を交えての記念撮影

学校関係者を交えての記念撮影

 歓喜の涙もあった一方で、選手たちからは笑顔が多く見られ、12年前とはまた違った光景になりました。12年前は涙が多かった駱燕萍ヘッドコーチは見ている限り笑顔で、選手たちが自ら試行錯誤しながら成長し、目標を達成していく姿を達観しているようにも見えました。

 振り返ると、2017年12月に高雄で予選敗退(下記URL参照)してから、特定の主力選手に依存して過度な負担をかけるようなことはせず、ベンチにいる12人を最大限活かして戦う方法に少しずつ変えていきました。場合によっては、ゲームが始まってから5分くらいで先発の5人全部入れ替えることもありましたが、それも少しずつ機能していくようになってきました。

 その翌年のHBLから今年まで、北一女は決勝トーナメントに上がってきています。2020年代に入り、4回決勝に進出するまでになり、今年台北アリーナではじめて優勝しましたが、長い時間かけて取り組んできた成果がようやくの思いで出ているようにも見えました。

 試合終了後の会見で、選手の一人が涙ぐみながら、「私たちやっと(台湾風)チキンカツが食べられる!」と話していました。聞けば、HBLの準備段階から食事のカロリー制限を行なっていて、揚げ物や甘い物はほとんど食べられなかったそうです。決勝で勝ち、全て終わったことで、その制限が解かれることになり、思わず出てしまった一言のようですが、以前では想像できなかった一言と光景に、経過した12年の月日の長さを感じました。

【参考】
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=2018210222530
http://www.ima-earth.com/contents/entry.php?id=20182916192


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