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台湾の高校バスケHBL 悲しき決断
2014.01.14 up
李台英(リー・タイイン)ヘッドコーチ
台湾の高校バスケHBLは、12月9~14日に女子の予選が行われました。
HBLは甲級、乙級とあり、甲級が1部、乙級が2部に相当します。
甲級女子は、12チーム以上のエントリーがあった場合は10月下旬に予備予選を行いますが、前年準決勝リーグに進出したチームはシードされます。今年はちょうど12チームのエントリーだったので、予備予選は行なわれませんでした。
女子の予選は全12チームが2組に分かれ、総当たりのリーグ戦を行います。この結果、各組上位3チームが準決勝リーグに進出し、それ以外の6チームで残り2チームを決める敗者復活戦を行います。
敗者復活戦は最終日に行われ、A組5位とB組6位(以後一)、A組6位とB組5位(以後二)が午前中に試合を行い、午後から一の勝者がB組4位と、二の勝者がA組4位と試合を行い、午後の試合に勝った2チームが準決勝リーグ進出です。
今回は、女子の予選で見たものを、台湾の報道を参考に紹介します。
休憩中の様子
台北市立陽明高級中學(以下、略称の陽明高中:ヤンミンガオジョン)は、近年低迷していますが、昨年、U-18台湾代表のヘッドコーチ(以下HC)を務めた李台英HCの厳しい指導の下、5年前に決勝に進出したこともあるチームです。
その陽明高中は、今年の予選を1勝4敗のA組5位で終え、最終日の敗者復活戦に回りました。敗者復活戦は、午前の試合でB組6位の私立治平高級中學(桃園縣)に41ー30で勝利。前半を29ー3で切り抜けたことで余裕が生まれ、試合後半で疲労の蓄積を防ぎ、午後の試合に向けて態勢を整えました。
試合終了直後の様子
午前に試合をした選手たちが休養していたときのことでした。
2枚目の写真の左側にいる選手が、チームメイトを連れてシュート練習を始めました。その選手は史靜茹(シー・ジンルー)といい、183cmの長身を生かしたプレーで、2年生の昨年から主にセンターで活躍している主力選手です。
2枚目の写真で彼女の右手にテーピングがありますが、それは1ヶ月前に参加した大会で負傷したものです。HBLの1週間前に手術を行なったばかりで、担当医から出場を止められている状態でした。それを受け、李台英HCは彼女を予選の5試合に出場させませんでしたが、いてもたってもいられなくなった彼女は、出場に備え、感覚を養っていました。同時に、彼女の熱意に負けた母親は「負傷箇所が悪化し、その後、何かしらの影響が出ても、その全責任は自分で負う」という念書を用意しただけでなく、コーチも担当医に相談し、出場許可を取り付けました。
裏では選手たちが大号泣
午後の試合、陽明高中はB組4位の私立普門高級中學(高雄市)と対戦しました。
李台英HCは、史靜茹にユニホームの着用は許可しましたが、ケガの悪化を防ぐため先発出場は許可しませんでした。
試合に入り、陽明高中は第1Qを9-9、第2Qを15-18の24-27で切り抜けますが、午前1試合した影響から選手たちに疲労の色が少しずつ見え始め、第3Qから失点が増え、点差がどんどん広がっていきます。
そして、第4Qでは残り5分を切った時点で10点差以上になり、陽明高中は少しずつ追い込まれていきました。途中出場も叶わず、その様子をずっとベンチで見ていた史靜茹は我慢できなくなり、李HCに出場を何度も直訴しますが、李HCはそれを拒み続けました。疲労が体をむしばみ、劣勢にまわったチームメイト達の姿をなす術なく見つめる彼女の目には涙がたまり、頬をつたっていきました。
史靜茹以外の選手たちの1日がかりの頑張りも虚しく、試合は50-68で敗れ、彼女の最後のHBLが終わりを告げました。
関係者に声をかけられ、抱かれ、涙があふれる李台英HC
試合終了直後、3枚目の写真のように集合した選手たちに、李台英HCは、
「何泣いてるの? 負けたのはアンタたちが悪いんじゃないの、アタシが全部悪いの! 分かった?」
と強い口調で声をかけ、その後、試合を簡単に振り返りました。
李HCの話が終わってからは、選手たちは会場の人目につきにくいところへ行き、ひたすら泣き崩れました(4枚目の写真参照)。選手の父兄も駆け寄り、慰めますが、史靜茹を2月の準決勝リーグの舞台に立たせてやれなかった悔しさが残る選手たちの感情は、なかなか収まりませんでした。
その一方で李台英HCは、選手たちの様子を気にしながらも、1人ベンチでたたずんでいました。しかし、上の写真のように関係者に声をかけられると、感情を押さえ切れなくなり、涙を見せていました。李HCは私が見ている限り、1枚目の写真のように、選手たちの前では厳しく檄を飛ばし、弱い姿を絶対に見せない方ですが、この時ばかりは人目をはばからず、涙を流しました。
李HCは、試合後、史靜茹の母親に、
「(アタシには)できない! 負けるとわかっていても、あの子の選手としての未来を賭けてまではできない! これ以上あの子に(ケガの)負担をかけられない!」
と話し、大切な選手の体と未来を最後まで守り抜きました。
同時に、他の選手の父兄には「お宅の大切なお子さんとその未来をお預かりしています」という覚悟を示しましたが、見ていてあまりにも悲しく、つらい李HCの姿でした。
*参考
http://hbl.pixnet.net/blog/post/39609301
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