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中国:上海

イエン ヨウコ

職業…書き描き屋

居住都市…上海市(中国)

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311の形に並べられた祈りのキャンドル

311の形に並べられた祈りのキャンドル

今回は、中国ではなく福島の話が中心になりますが、
ぜひたくさんの皆さんに知っていただきたいと思い、あえて3回に分けて書きました。
最後まで読んでいただければ幸いです。
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2013年3月11日、東日本大震災2周年を迎えました。
東北地方の中で唯一上海に事務所を持つ、福島県。
その福島県上海事務所と上海福島県人会の主催による
「ふるさと復興応援のつどい」が10日に開催されました。

つどいは式典とシンポジウムの二部構成になっており、
最初の式典では、式典参加者による復興へのメッセージが巻かれたキャンドルを灯し、
皆で黙祷を捧げました。

続くシンポジウムでは3名の講演者の方々が福島から来てくださり、
貴重なお話をうかがうことができました。


村上美保子さん

村上美保子さん

1.震災の語り部による震災の体験と復興に向けての取り組み

福島県相馬郡新地町、釣師浜海水浴場から200mほどのところにあった
明治創業の老舗旅館「朝日館」。
客室7室の小さな小さな旅館は、あの日津波にのまれ、
その姿を見るも無惨なものに変えてしまいました。
その旅館の女将をつとめていた村上美保子さん、
彼女は地震発生後ほどなくして津波が来る予感をおぼえ、
いち早く高台へ避難することにしました。
無事に避難できた後に見たのは、真っ黒で高さ17m近くもあったという水の壁。
愛する町は一瞬で跡形もなく消え去り、その町の112名の尊いいのちが家と共に流されました。


震災後の旅館「朝日館」

震災後の旅館「朝日館」

旅館は1階がつぶれ、ボイラー室などを失ったものの、プラスチック製の看板は残りました。
体中傷だらけになりながらも最後の力をふりしぼって胸を張り立っているかのように感じられたと
村上さんは言います。
この先辛いことがいっぱいあると思うけれど、老舗旅館の女将だった誇りを忘れずに生きていこう、
そう決意されたそうです。

現在、村上さんはご家族3人で総戸数110戸の仮設住宅に暮らしています。
部屋は2間、わずかな家財道具と3人の布団ですきまがなくなる程度の広さ、
壁が薄く物音がすべて筒抜けになるため、静かに気を遣いながらの毎日です。
ともすれば心がささくれだって互いが辛辣な関係になりかねないところですが、
そこを上手く工夫しあってみんなで生活を楽しもうと取り組んでいる
元気なコミュニティーの姿がそこにあります。


左:おばあちゃんのアクリルたわし 右:おばあちゃんたちのそばで宿題をする子どもたち

左:おばあちゃんのアクリルたわし 右:おばあちゃんたちのそばで宿題をする子どもたち

家の中に引きこもりがちだったおばあちゃんを家から引っぱり出す作戦!として
みんなでアクリルたわしを編むことを考えました。
インターネットを利用し、最初はアクリル毛糸をわけてもらって、
みんなで週一回集まってたわしを編み、販売しました。
その売り上げで次の材料を購入したり、温泉にも出かけることができました。

ただただ作業をするだけでなく、お茶を飲みながら話もできます。
子どもたちも作業のある日には学校から作業場へ直行して、
おばあちゃんたちのそばで宿題をします。
誰のおばあちゃん、誰の孫なんて関係ありません。
みんなで寄り添い、その温かみを感じながら笑えること、
その幸せをかみしめることができる空間がそこにあるのです。

そんな子どもたちですが、ここには小学生が7人しかいなかったこともあり、
各地から寄せられる子ども向けの物資に余剰分が出て来ると、
残念なことに物を大切にする感謝の気持ちが薄れるようになってきました。

いろんなものを失った悲しみは言うまでもなく、
このような問題における心のケアは大変重要な課題です。
そこで今度は子どもたちのためにバーチャルマーケットである
「マイタウンマーケット」を開催することにしました。

企画、プレゼンテーション、すべて子どもが自分たちで行います。
店が決まると画用紙で模型も作ります。
その模型をもとに大人たちも手伝って店を作り、出店と相成ります。
ビーズアクセサリーショップ、パン屋、コーヒーショップなどなど、
子どもたちの企画が実現していきます。

おもしろいものではプラネタリウムがありました。
この企画は幼稚園児が企画し、ドームを大人が建材で作り、
市販の家庭用のプラネタリウムを設置して中で星を楽しんでもらうものでした。
お客さんを中へ案内し、目が慣れて星が確認できるようになると、
「これが北斗七星です」と北斗七星を紹介してくれるのですが、
他の星の名前はたずねても「わかりません」。
とにかく教えてもらえるのは北斗七星だけ。
それでも一所懸命接待をして、お客さんに北斗七星を紹介するのです。

こうやって開催されるマイタウンマーケット、すでに7回目を準備中だそうで、
大人も「便乗して」楽しんでいるそうです。

村上さんはこの暮らしの中で自身が何故助かったのかを自問自答しました。
何か大きな使命があるのではないか、それは「伝える」ということなのではないか。
旅館「朝日館」の再建は諦めましたが、再び忙しい毎日が始まります。

2006年から綴り続けて来たブログを震災10日目から再開し、
避難所から、仮設住宅から、ブログ、フェイスブック、ミクシィ、ツイッターなどを通して
新地町の様子を発信し伝え続けます。
同時に、子どもたちへ体験を語る「語り部」ともなり、
子どもに限らず小学生からお年寄りまで、この2年間でまわった場所は40カ所になりました。

一方で、地域をこえた新しい試みにも参画されています。


できたてほやほや、東北お遍路(こころのみち)プロジェクト公式ロゴマーク

できたてほやほや、東北お遍路(こころのみち)プロジェクト公式ロゴマーク

「東北お遍路(こころのみち)プロジェクト」
http://tohoku-ohenro.jp/

自治体などの区域の枠にとらわれず、被災地域が手をつなぎ行っていくプロジェクト。
福島から青森までの沿岸地域にそれぞれの津波被災のストーリーを伝承していく場所となる
88ヶ所の巡礼ポイントを設け、宗教に関係なく慰霊巡礼が行えるようにします。
そのことが、周辺地域での産業を復興させ雇用を生むことで人々を呼び戻し、
震災の記憶を語り継いでいくことに繋がっていきます。

村上さんの語り部としての毎日はこれからも新しいページを綴り続けていきます。



☆村上美保子さんのブログ
『朝日館の女将のてんてこ舞日記』
http://asahikanok.exblog.jp/

☆仮設住宅にみんなでつくる新しい町のいちば
 『マイタウンマーケット』
http://mytownmarket.blogspot.jp/

☆東北お遍路(こころのみち)プロジェクト
http://tohoku-ohenro.jp/


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