ブラジル

ブラジル:サンパウロ

日下野 良武(くさかの よしたけ)

◎職業;ジャーナリスト、ブラジル文化研究家
◎居住都市;サンパウロ市(ブラジル国)

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 北海道はこれから花が咲き誇る季節だ。長年、地球の反対側の国で暮らすと日本の野や山が懐かしい。幼いころ摘んだ蓮華草やタンポポが目に浮かぶ。一方、ブラジルは年中ほぼ温暖な気候で植物の生育に適しており、国全土が花の“展覧会会場”のようだ。


イペーの花

イペーの花

 代表的なのは樹に咲く“イペー”。色は黄と紫でこの国の国花になっている。国土が日本の23倍と広大なため開花期は各地域で異なる。花びらは1週間ほどで散り木の根元の周りは落花で覆われる。近年、日本の郷里へ種を持ち帰った人が宮崎、和歌山、兵庫、静岡県などで植樹し育てていると聞く。ただ、花はブラジルの気候、景色の中で眺めてこそ価値がある。

 サンパウロ州立大学構内に高さ2メートルほどの黄色のイペー樹が10数本ある。何度か足を運んだが、南米の強い日差しを受け透き通るような黄色の花に見とれた。ブラジルを訪問されたら満開の国花を一度じっくり観賞していただきたい。ちなみに、ブラジルは世界一のコーヒー生産国だが、その白い花は咲いた後3日ほどで散るという。


 ブラジル人は冠婚葬祭の場でよく花を贈る。葬儀では菊、結婚式や授賞式などのお祝いではバラやカーネーションが多い。若い男性が恋人の家を訪問するときは大きな花束を抱えて向かう。家族にも好印象を持ってもらうためで、事前に好みの花を十分調べておくことが肝心、とは酒席で耳にした若い男性諸君の話。手作り料理持参よりも花のほうが最高のプレゼントのようだ。

 拙宅には塀の内壁に沿って幅約30センチ×長さ12メートルの細長い花壇がある。6月に入るとツツジが満開になる。日本に住む旧友の娘さんが園芸家と聞き、シャモジのような形の赤い花「ブロメリア・チランデシア(当国名)」をメール送信したら既にご存じだった。残念ながら自宅にイペーの樹は植えていない。




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