オランダ

オランダ:アムステルダム

フリードリヒス カオル

職業…フリーライター

居住都市…アムステルダム市(オランダ)

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オランダに戻ってきた野生のオオカミ。

オランダに戻ってきた野生のオオカミ。

 童話・赤ずきんちゃんに登場する悪役、といえばオオカミでしょう。満月の夜になると、鋭い牙や剛毛が生えて獣と化し、人間を襲う「狼男」の伝説や、「送りオオカミ」なる言葉もあるように、オオカミには古今東西ネガティブなイメージがつきまとってきました。


 ヨーロッパ諸国では、こうした伝承の影響からか、21世紀になってもオオカミは恐怖の対象とみなされています。家畜のみならず、人をも襲う害獣と信じ込み、忌み嫌う人も多いようです。それは、伝説や逸話への登場頻度が高い動物であり、人びとの生活に密着してきた証でもあるでしょう。そんなオオカミたちも、20世紀初頭を境に乱獲や生態環境の変化などが原因で激減しました。


オランダ東南部に出現したオオカミ。

オランダ東南部に出現したオオカミ。

 しかし、数年前のこと、オランダ北部の牧草地に1頭のオオカミがひょっこり現れたのです。この個体は人を恐れる気配を見せず、民家付近に姿を現したため、話題をふりまく存在となりました。遭遇した人たちは当初、大型犬が迷っている、程度にしか思わなかったそうだが、その堂々たる姿を撮影し改めて観察したところ、「もしかしたら…オオカミでは?」ということで自然保護団体と協力し詳しく調査を行ったところ、犬ではなく、やはりオオカミであることが判明したのです。


 このオオカミは国道沿いの道を横断したり、野原をゆっくり歩き回ったりと自由に行動したため、人びとの想像力をさらにかきたてました。「一匹オオカミか?仲間はいるのだろうか?」「どこかに定住しているのか?」「何を食べて生きているのだろう?」などなど。

 オランダのみならず、オオカミ出没のニュースは、今や、ヨーロッパ全土をにぎわしています。数年前、ベルギー北部のフランダース地方にも一頭のオオカミが現れたが、これは実に約100年ぶりのことだったそうです。ベルギーとオランダの両国に拠点を置く自然保護団体・ランドスハップ(Landschap)は、野生のオオカミ出現のニュースをメディアに報告し、ベルギー人にとって待ちに待ったニュースと伝えたほどでした。


 オランダでは、中東部の自然公園Veluwe(フェルーヴェ)内でも、オオカミが繁殖していることが判明しています。オオカミの定住が歓迎される中、近郊農家では、羊を狩られるのでは…と危惧しているそうだが、調査によればオオカミたちは主に、イノシシ、野ウサギ、シカなどの野生動物を捕食して生きていることが判明しています。

 家畜を襲うため、古来より人間から徹底的に敵対視されてきたオオカミ。しかし彼らは、農作物を荒らす野ウサギやシカを捕食し、自然界のバランスを保ってくれる重要な役目を果たす存在でもあります。オランダやベルギーでは、この美しい動物のカムバックを願う人たち年々、増えているそうです。オオカミが「悪役」の汚名を返上する日も、いつかきっとやって来るに違いないでしょう。


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