オランダ

オランダ:アムステルダム

フリードリヒス カオル

職業…フリーライター

居住都市…アムステルダム市(オランダ)

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消防車ならではの赤い車体が目印となっている「LP店」

消防車ならではの赤い車体が目印となっている「LP店」

 何、あの車?古い救急車?それとも、キャンピング用の車(キャラバン)?一般道路をこの自動車が走れば、誰もが一瞬、目を奪われることでしょう。自動車博物館でしかお目にかかれないようなその自動車は、かつて1960年代、オランダ中を走り回っていたという元・消防車だからです。普通ならば廃車にされるべき消防車を買い取って修理を重ね、現役として使用しているのは、オーナーのオランダ人、ユープ・シリングス氏です。それだけではありません。シリングさんは少年時代から趣味で収集してきた、約1万枚に及ぶLPをこの消防車に積みこんで、全国行脚にでかけ、道行く人たちに音楽を流すことで、LPの良さを知ってもらうことを思いついたのです。


 もともと、レコード派だった彼は、CDの生産に押されてLPの姿が消えかかった1980年代も、執念に近い意気込みでLPを収集し続けたそうです。LPケースやジャケットの芸術的美しさ、乾いたような独特の音、など、CDに勝るとも劣らない魅力を持つLPを、心から愛し続けていたゆえでした。CDには世界的にリバイバル人気が出てきていますが、シリングスさんの元には、廃盤や限定品などの貴重なLPも多く保存されており、若い世代の人たちにとってはとても新鮮と大好評です。


内部の様子。1960年代を彷彿とさせる小物も見もの

内部の様子。1960年代を彷彿とさせる小物も見もの

 彼の「LP消防車」は、全国各地の屋外イベントなどですでに注目を集めていましたが、往年のLPファンやLP専門店のオーナーらが、シリングスさんの情熱にいたく感動・同意し、出資を申し出、現在は複数のLP愛好家たちによって共同運営されているそうです。


各種イベントや、誕生会などにも利用できる

各種イベントや、誕生会などにも利用できる

 ちなみに、収集されているLPのジャンルはジャズ、シャンソン、タンゴがほぼ70%を占めており、あくまでもシリングスさんの好みによりますが、それ以外のジャンルのLPコレクションも目白押しです。また、希望者にはLP販売サービスもあるので、交渉次第で、稀少価値のあるLPを手に入れることも可能です。


夏の夜のイベントにも引っ張りだこ

夏の夜のイベントにも引っ張りだこ

 LPに針を落とした瞬間から曲が始まるまでの、キャンプファイアーのような、郷愁を誘うあのプチプチ音がたまらない!という往年のLPファンのみならず、最近ではエコを重要視する人たちからも熱い支持を受けており、各種エコ関連イベントでは引っぱりだこ状態です。廃車寸前の消防車を大切に「再利用」している点や、古き良き時代のLPの素晴らしさを広める、伝道師的役割を担っているシリングさんへの絶賛が、その背景にあることはいうまでもありません。リクエストひとつで全国を回るLP消防車は、懐かしい音を今日も全国に届け続けています。


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