カナダで増える安楽死
2023.08.10 up
10年来のエクササイズ仲間、香港系移民のジョアンが亡くなりました。
彼女と出会ったのは、私が卵巣がんの治療を終えた頃。それまでは週2回プール通いでしたが、抗がん剤と放射線治療の副作用か、塩素による肌荒れがひどくて諦めることになりました。
代わりに何をしようかと、試しに行ったクラスにいたのがジョアンでした。初めてのクラスで、ステップのセットがちゃんとできていなかったのを直してくれたのを覚えています。
その後、すっかりステップに「ハマって」しまった私は、同様にステップが好きなジョアンと、週2日、クラスで顔を合わせるようになりました。そんな風に始まったジョアンとの仲はコロナで外出規制となる2020年3月まで続きました。
徐々に規制が緩和され、昨年、クラスが完全再開されたときには、エクササイズ仲間との再会を喜んだことを覚えています。でも、ジョアンの姿はありませんでした。ジョアンと特に仲が良かったサンドラに聞くと、ガンの闘病中だとか。手術も無事に終わり、抗がん剤治療も順調ということで、胸をなでおろしました。お見舞いについては残念ながら免疫が下がっているとのことで、やめておいたほうがいいとサンドラに言われてしまいました。
ステップ仲間の中には胃ガンで闘病した人もいます約1年経って、元気に戻ってきたときには、みんなでハグをして治療終了を喜びました。
ジョアンも同様に帰ってきて、あの笑顔を見せてくれるのを待っていただけに、仲間から亡くなったと聞いたときはショックでした。
そんな私にサンドラがさらに驚くことを言いました。「この1ヵ月は本当に辛そうだったけど、やっと穏やかな世界に行くことができると、亡くなる前日のジョアンは嬉しそうだったわよ。人生に悔いはない、香港からカナダに来たおかげで、Medical Assisted Deathを選ぶこともできたって」
ジョアンは安楽死を選んだのです。Medical Assisted Death(あるいはmedical assistance in dyingーMAID)とは、医師がほう助する死、すなわち安楽死のことを言います。
私が抗がん剤治療を受けた部屋。コーヒーや紅茶、クッキーも用意されていて、快適に治療を受けることができるような配慮がありました
カナダでは2016年6月に合法化されました。その年の秋に知人のお母さんが、末期ガンによりMAIDを決心。生まれ故郷の小さい島で、子どもたちや孫たちに囲まれて旅立ちました。まだMAIDが始まってすぐだったため、大きな記事になっていました。
「MAIDが合法化されたので、自分らしく逝くことができて嬉しい」
お母さんのコメントでした。
数年後、その島を訪れたときに、彼女のお母さんに思いを馳せました
以来、カナダでMAIDを選択する人は増え続けています。
2017年 2,838人
2018年 4,478人
2019年 5,425人
2020年 7,383 人
2021年12,689人
(出典『Statics Canada(カナダ統計局)』)
ただし、MAIDは、
・18歳以上で患者自身が選択していること
・不治の病を患っている
・末期症状であること
などいくつかの条件をクリアしないと認められません。
カナダ統計局によると、2019年~2020年にかけてMAIDを希望したうち75.5%が安楽死することができたそうです。一方、6.9%は却下、14.5%は承認される前に死亡、3.1%はリクエストを撤回しています。
私は母をガンで亡くしています。痛みがひどいというし、ガンにはなりたくないと母は昔から言っていました。苦しむぐらいなら、殺して欲しいとも。
幸か不幸か進行が早く、診断後2カ月もせず、亡くなった母も、カナダにいたらMAIDを選択したでしょうか。あるいは私も将来、末期がんで苦しむことになったら、そういった選択をするのでしょうか。
ショックを受けた私にサンドラが言いました。ジョアンの分もエクササイズも人生も楽しもう!
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