ブラジル

ブラジル:サンパウロ

日下野 良武(くさかの よしたけ)

◎職業;ジャーナリスト、ブラジル文化研究家
◎居住都市;サンパウロ市(ブラジル国)

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サンパウロ市住宅街の歩道のごみ

サンパウロ市住宅街の歩道のごみ

 「デコボコ道を歩きながらこう考えた。ゴミ散乱が目につけば腹が立つ。降雨があれば流される。掃除を強いれば窮屈だ。とかくこの世はままならない」―。漱石の「草枕」の冒頭文を思い出し、早朝散歩の折、取るに足りない替え文句が頭に浮かんだ。


割れた石板歩道の上を歩くのは大変

割れた石板歩道の上を歩くのは大変

 最近、筆者は毎朝5時前に起きてマスクを着け、帽子をかぶり、眼鏡を掛けて出かける。自宅前の広場の周囲を歩くのをやめ、閑静な住宅街の道路を5キロほど歩いたり走ったりの日々だ。平たんな道が多いが、途中に急登坂もあり、コロナ禍の中で1時間ほどささやかな抵抗を試みている。会う人は2~3人で、通り過ぎる車は1、2台。


 ごみ一つない日本の歩道に比べれば、お世辞にもきれいと言えないサンパウロ市内の道路。所々、街路樹の根部分や歩道の石板が盛り上がったり、電柱にごみ箱が設置されていながら空き缶、ペットボトル、ベニヤ板などが路上に捨てられたりしている。しかし、不平不満ばかりが頭に浮かべば身体に悪いし、面白くない。幼い頃の運動会を思い出し、こんな障害物を跳び越えて進めば、再び瞬発力が湧いてきそうだ。


 歩いていてホッとするのは、すれ違う人がお互いに笑顔で「ボンジーア!(おはよう)」とあいさつを交わすことだ。早朝出勤者だろうか、会話がなくても声と表情に何か温かみが感じられる。犬や猫との同じ場所での出会いもあるが、自宅まで付いて来られたら困るのであいさつはしない。夜明けを知らせる元気な雄鶏の大声も三方から聞こえてくる。ブラジルではポルトガル語で「コッコリッコー」と鳴く。一度、「コケコッコ―」と声を掛けたが、返事はなかった。


 当分の間、コロナ禍の中で運動を怠らず、帰宅後はシャワーを浴びて体調管理に気を付けよう。日中、外出できないこの機会に、文豪・漱石の全作品再読に挑戦してみたい。


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